高級車の盗難はどうして防げない? 特定の日本車ばかりが狙われる理由高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2022年09月19日 14時55分 公開
[高根英幸ITmedia]

 日本では犯罪の検挙率が高いといわれている。しかしこれは、殺人や強盗、傷害、暴行、誘拐などの凶悪犯に限っていえば9割前後となるものの、窃盗に関していえば4割程度でしかない(令和3年度 犯罪白書より)。

 倫理観が欠如した人間にとっては、窃盗は最も手っ取り早く金品を手に入れる方法であり、泥棒もまた最古の商売(盗品の売買はともかく、生業としての手段として)といえるだろう。

 しかも自転車窃盗など犯人が見つかりにくいものの背景は、被害者の多くが盗難届などを出しておらず、そもそも犯罪として認知されていない、というからくりがある。

 怪しい人物を見つけたら、それが自転車に乗っていれば防犯登録から所有者を照会し、盗難届けが出されていれば、結果として自転車窃盗として検挙することになる。しかし、路上に明らかに盗難された自転車が乗り捨ててあっても、警察官は見向きもしない。

 自分の手柄にならない、というのも理由としてはあるかもしれないが、乗り捨てられている自転車の窃盗犯を見つけ出すことは、その労力を考えれば成果は見合わないものなのだ。

 認知件数で窃盗のうち約3割、乗り物盗の大部分を占める自転車盗は、検挙件数(認知件数の半数以下)で見れば5%あまり、実に6分の1程度へと減少していることからも、この傾向は明らかだ。盗難届を受理しても、それを受けて捜索するようなことはしないのである。

 ちなみに危険運転致死傷罪と過失運転致死傷等は、検挙率100%となっている。これは交通事故を起こし、罪状から立件されて起訴されるからで、犯罪被害から犯人を特定して追い詰めていくのとは異なるから、当たり前でもある。

 さて、一般的な窃盗と比べるとクルマの盗難はちょっと特殊だ。どうして特殊なのか、その理由をこれからお話していこう。

(写真提供:ゲッティイメージズ)
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