これは筆者もまったく同感で、日本社会のハラスメント文化の源流をたどっていくと、どうしても「教育現場」に突き当たる。そのことを、以下のような記事でこれまでもたびたび指摘させていただいてきた。
日本人の働き方が変わらない、本当の原因は「大縄跳び競走」にある
日本の教育は「服従」と「忍耐」こそが美徳だと叩きこむので、その弊害でいまだにいい歳をこいたおじさんたちが「オレたちが子どものころは、教師にぶん殴られるのが普通だったけどな」とか「オレが新人のころは、上司もめちゃくちゃで精神的に追いつめられたけれど、そのおかげで今の自分がある」なんて感じで、ひどい暴力やハラスメントを受けたことを誇らしげに「武勇伝」のように語る。
「服従」と「忍耐」で一人前になったと思い込んでいるので当然、今度は自分が人を教育するときには、部下や後輩にも「服従」と「忍耐」を教え込む。先輩に殴られて育った人は後輩を殴るし、新人時代にイビられながら教育された人は新人をイビる。
ちょっと前に、五輪代表にもなっていた新体操の女性選手に体罰をして問題になった男性コーチが、謝罪会見で「自分もそのように指導をされた」と告白したが、人間というのはどうしても自分がされた暴力やハラスメントを「自分の人生を肯定するため」に繰り返してしまう生き物なのだ。
このように「ハラスメントの再生産」という特徴を踏まえると、コロナ禍以降の日本社会でパワハラやカスハラが急増しているのも納得ではないか。
もともと経済的・精神的に追いつめられていた「40代以降のおじさん」は、コロナ禍になって小学校に再入学したように「規則を守れ」を叩き込まれた。マスクをしろ、自粛をしろ、飲みに行くなんてとんでもない、在宅勤務をしろ、リモートでもちゃんと部下や後輩のマネジメントをしろ……これまで経験したことのない理不尽なルールでがんじがらめに縛られた。この過度なストレスが爆発しているのが今の状況なのではないか。
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