和田氏のマネジメントの軸は明確です。
「企業危機を招いたのはひとえに経営陣の責任である」
「しかし、社員全員の協力なくして、企業再建はあり得ないから、社員のみなさんの協力が必要である」
という強いメッセージを白書の中で何度も何度も伝えています。
企業はトップ、幹部で決まるものです。しかし、決めた方向に確実に進むためには、社員が会社で起きているさまざまな問題を自分事として受け止め、危機感を持って仕事をする以外に道はないのです。これこそが、これからの会社に必要な社員の「主体性」です。
幹部も一般社員も、自ら主体的に考え、行動できるようにならなくては、企業は生き残ることができない時代です。従業員エンゲージメントを高めるとは、この主体性を引き出せるかどうかにかかっています。
では、どうしたら社員は主体性をもって仕事に打ち込むことができるのでしょうか。
その鍵は、ドラッカーのいう「成果をあげるための8つの習慣」の第一、「なされるべきことを考える」にあります。
「何をしたいかではないことに留意してほしい。なされるべきことを考えるのが第一の習慣である」(出所:P.F.ドラッカー『経営者の条件』ダイヤモンド社)
「組織にとって今なされるべきことは何かを考えることが経営者の仕事である」と経営陣がどこまで理解しているかどうかが重要です。
和田氏がドラッカーの言葉を意識していたどうかは分かりませんが、少なくとも92年当時の西武百貨店にとって「なされるべきこと」は、経営陣が危機感を持つことでした。そして、社員に会社の実態と問題を知らせることで全社が危機感を持つという「危機についての共通認識を持つこと」と考えていたのです。
これは、コロナ禍でさまざまな問題が浮き彫りになってきた今、全ての企業が肝に銘じる必要があることです。何か問題が起こっても、「それは他の部署がやったこと」「他の社員の責任だ」「社長の問題だ」といったように他人事としていたら、会社は良い方向には向かいません。危機感の醸成、危機感の共有によって初めて、主体的に動くきっかけが生まれるのです。これがエンゲージメントが落ちた企業が真っ先に取り組むべき一手です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング