佐藤: エンタメやスポーツに限らず、才能のある人たちがより才能を生かせるようサポートするには、自分が成長していかないといけないですよね。
実は僕が吉本を辞めたきっかけも“成長”にあるんです。吉本には約10年在籍していたのですが、それだけの期間があればどんな仕事も無難にこなせるようになります。さらに、「吉本」という強力なバックアップがあるから、芸人さんから「やりたい」と言われたことは大抵実現できてしまう。
でも、この環境だと僕は成長しません。マネジャーの僕が成長しないということは、僕が受け持つ芸人さんたちに提供できるものもここから先変わらないことになる。もっと伸ばせるはずの才能を、マネジャーのインプット不足で頭打ちにしてしまうかもしれないと危機感を持ったんです。
あれから経営者として、たくさんの新しい経験をしました。今吉本に戻ってマネジャーをするなら、当時とは全然違うアプローチでサポートできると思いますね。
澤井: 僕たちの仕事は、肩書はマネジャーでも、実際にやっている内容は“パートナー”という表現の方がしっくりくるかもしれませんね。夢を実現するためには、それを実行する本人の成長はもちろん不可欠だけれども、サポートする僕たちも一緒に成長しなければいけないし、マネジャーだからと言って意見を押し付けてもうまくいかない。対等な関係でいるためにも、マネジメントの現場では僕は自分の意見は極力伝えないようにしています。
佐藤: ジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんも同じことを言っていましたね。マネジャーの立場として、自分に意見があっても言わない。どう思う? と相手に質問して、考えてもらう。そうすると自分ごと化できるって。
ただ、それが理想形だとは思いつつ、マネジャーの立場からするとつい意見を言いたくなることもあります……。そういうとき、澤井さんはどうしていますか?
澤井: もちろん、僕にも「もっとこうしたほうがいいのに」と思うことはあります。そのときは一度は僕の考えをぶつけますね。でも、相手が乗り気じゃなかったらそれ以上は追求しません。こちらの意見を押し通して、無理やり実行してもうまくいかないと思うから。
実は、上原浩治さんにTwitterとYouTubeを提案したのは僕なんです。特にTwitterは2009年のメジャー挑戦1年目。「日本では上原さんの情報が少ないので、米国での日常を配信すればファンは喜ぶと思うのでやってみませんか?」って。でも、僕は選択肢を提示しただけで、上原さん自身が「やってみよう」と決断し、ポジティブに取り組んでくれているからうまくいっているんです。
「意見を言う」というよりも、「選択肢を提示」するように心掛けると、相手にも自分ごと化して考えてもらいやすいかと思いますね。
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