プラチナバンドで楽天モバイルが妥協案、「非常時の事業者間ローミング」の検討も開始房野麻子の「モバイルチェック」(4/4 ページ)

» 2022年10月01日 09時27分 公開
[房野麻子ITmedia]
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4キャリアは導入は前向きも「緊急通報のみ可能」という立場

 4キャリアとも、非常時の事業者間ローミングを検討、実現していくことには賛同している。ただ、基本的には、早期実現可能なのは緊急通報のローミングのみで、一般の通話やデータ通信の事業者間ローミングの実現は難しい、あるいは継続的な協議が必要との考えだ。

 ただモバイル通信は、SMSでの本人認証や「PayPay」をはじめとする決済で使われており、インフラとしての重要性が高まっている。そこでソフトバンクやドコモが検討を提案しているのがデュアルeSIMだ。ユーザーにコスト負担を強いることにはなるが、povo 2.0のように契約するだけなら無料(180日間以上有料サービスを契約しない場合は解約)のサービスもある。

 関係事業者として検討会に参加しているインターネットイニシアティブ(IIJ)の佐々木太志氏は、7月のKDDIの障害で、IIJmioのフルMVNO基盤で提供しているデータ専用eSIMの7月2日、1日の申し込み数が「6月平均の8倍になった」と発言。MNOの大規模障害時にも利用者に利便性を提供できるビジネスを行っており、「既存ビジネスの芽を摘むことがないように丁寧な議論をしてほしい」と注文した。さらに「MVNOの利用者が置いてきぼりにならないように、MVNOを含めた議論が必要」とも語っている。

 第1回会合では、命に関わる緊急通報のローミングは比較的早期に導入されそうだが、フルローミングの実現は難しそうだという印象を持った。そもそも現時点での技術では、7月のKDDIの障害のように加入者DB近辺で障害が起こるとローミングはできない。ドコモが提言している通り、ローミングだけではなく、Wi-FiやデュアルeSIM、衛星通信、公衆電話など、緊急時に対応できるさまざまな方法を用意しておくくべきで、私たちユーザーも平時から非常時を想定してWi-Fiを利用できる場所を確認し、コスト的に許せるなら複数回線の契約が必要だろう。

筆者プロフィール:房野麻子

大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。


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