リテール大革命

世界一稼ぐYouTuberも参入! ゴーストレストランの魅力と最新事情石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(2/4 ページ)

» 2022年10月13日 07時00分 公開
[石角友愛ITmedia]

ゴーストレストランの最大の課題は集客

 上記のようにゴーストキッチンやシェアキッチンサービスを提供するプレイヤーが増えたことで、デリバリー専用のフードビジネスを始めるための参入障壁は圧倒的に下がりました。

 コロナ禍でYOLO(You Only Live Once=人生一度きり)と考える風潮が強まり、独立起業をしたい思う人が増えたことで、ゴーストレストランを開業したいと思う人の数が全体的に増えていることもこれを後押ししています。

「人生一度きり」と考える人が増えている(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 実際、米ホスピタリティ・テクノロジー社の調査によると、2021年には企業ブランドの半数が何らかの形でゴースト、ホスト、クラウドキッチンのコンセプトを打ち出しています。19年に431億ドル(およそ6兆3000億円)と推定された世界のクラウドキッチンの市場規模は、27年には714億ドル(およそ10兆4370億円)に達すると予測されています。

 結果として、ウーバーイーツやドアダッシュなどの宅配アプリ上には無数のゴーストレストランが並ぶことになりますが、消費者は宅配アプリで何十分も時間をかけてオーダーをしたくはないため、一番よく知っているブランドや過去に頼んだことがある店舗など、なじみのある店をクリックする傾向があります。

 そのため、無数のノンブランドのゴーストレストランが新規顧客を獲得し続けるのは非常に難しく、ウーバーイーツのアルゴリズムが検索結果のトップに自分の店を表示してくれるチャンスに命運を託さなければいけない戦いとも言え、ときには非効率な結果にもつながってしまいます。

フードブランドとキッチン所有者をマッチング

 そんな中で最近米国で注目されているのが、インフルエンサーが始めた、フードブランドとキッチン所有者をマッチングさせるプラットフォームです。

 その代表格が、VDC(Virtual Dining Concepts)というフロリダを拠点に持つ会社です。VDCはレストラン業界で長年の経験を持つベテランのロバート・アール氏によって18年に始められました。

 VDCの特徴は、著名なユーチューバーやティックトッカー、有名シェフとタッグを組んでハンバーガーブランドやタコスブランドを作り、キッチンをすでに所有しているレストラン経営者たちとのネットワークを構築し、マッチングできる点にあります。

 レストラン側は自社でブランドを構築する必要がなくなり、自分のキッチン機材やキャパシティーに合わせたブランドを選択するだけで良くなるというわけです。いわば、ゴーストレストランのデジタルフランチャイズモデルとも言えるでしょう。

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