VDCのようにキッチン所有者とレストランブランド所有者(またはインフルエンサーやクリエイター)をマッチングさせるプラットフォームは他にも存在します。その一つが、リーフ・テクノロジー(REEF Technology)という会社です。
リーフでは、キッチンだけではなく、駐車場スペースや小道などの空きスペースを有効活用したいと思っている所有者に、ゴーストレストランブランド運営のフードトラックなどの機材を提供して土地活用を支援するというサービスも展開している点が特徴的です。
例えば、リーフとウェンディーズは、米国、カナダ、英国で今後5年間に700のデリバリーキッチンを開設・運営する新たな開発コミットメントを2021年に発表。ウェンディーズのグローバルレストラン開発・採用担当ヴァイスプレジデントのスティーブン・ピアチェンティーニ氏は、「リーフのような企業と提携することで、従来のレストランスペースを運営するための諸経費をかけずに、ウェンディーズを人口密度の高い都市部に進出させることができるのです」とコメントしています。
こうした取り組みにより、厨房スペースや厨房機能がある場所だけではなく、空きスペースを有効活用して不労所得が稼げるというメリットが生まれました。それだけではなく、例えば近所にカフェが全く存在しないエリアに住む人が、持ち家の空きスペースを活用して移動型カフェを展開できれば(しかもその運営は他者に任せて自分はライセンスフィーだけをもらうことができる)地域の多様性やクオリティーも上がる、という利点が挙げられます。
コロナで一気に需要が増えたゴーストレストランですが、その構成要素は目まぐるしい速さで複雑化していることが分かります。
インフルエンサーが自身のレストランブランドを簡単に立ち上げ、アプリやYouTubeでファンに対して集客をすることでゴーストレストランが一気に全国展開できるようになりました。同時に、ブランドを持たないゴーストレストランは淘汰(とうた)される可能性もあります。
また、「空きスペースや空きキッチン、空きスタッフの有効活用」という不労所得を得ることを目的としてビジネスを展開する事業者も増える可能性があります。
今後も多様化するゴーストレストラン業界の動向に注目しています。
パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナー
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。また、毎日新聞「石角友愛のシリコンバレー通信」、ITメディア「石角友愛とめぐる、米国リテール最前線」など大手メディアでの寄稿連載を多く持ち、最新のIT業界に関する情報を発信している。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
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