「かっぱ寿司」と「はま寿司」 衝撃の社長逮捕劇を15年前の“因縁”でひもとく(3/3 ページ)

» 2022年10月16日 07時57分 公開
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不祥事は起こるべくして起きた

 この後、13年11月に業界中堅企業「元気寿司」との経営統合を前提とした業務提携が発表されますが、翌年外食大手コロワイドによる「かっぱ寿司」買収計画が判明し、業務提携は白紙撤回されます。

photo 元気寿司提携のプレスリリース
photo 提携解消のプレスリリース

 これには「元気寿司」が嫌気したのでしょう。同社は当時から「回転しない回転寿司」の導入や積極的な海外展開など、大手4社とは異なる特徴的な戦略で成長していた同業者です。「かっぱ寿司」はゼンショーとの資本業務提携時には、水面下での相手の野心に嫌気したはずが、今度は逆に表向きで「元気寿司」との提携を進めながら、他方で外食大手コロワイドの野心に加担するかのような動きをとっていたわけなのです。

 これらゼンショーやコロワイドのエピソードからは、他の業種からは容易には想像しがたい、この業界に染みついた経営マナーの悪さがうかがい知れると思います。「かっぱ寿司」は現在もコロワイド傘下で運営されているわけであり、逮捕された田辺前社長はゼンショー傘下の「はま寿司」で取締役を務めていたわけですから、「悪しき業界風土」に首までドップリ浸かっていたとしても何の不思議もありません。一連の流れを考えると、今回の事件は起こるべくして起きた業界の暗部が最も悪い形で表に出たものとも思えます。

photo コロワイド傘下の企業

異例の社長兼務人事、「かっぱ寿司」復活は遠い?

 「かっぱ寿司」はコロワイド傘下に入った時点で、3期連続の赤字という状態にありました。その後のコロワイドの外食ノウハウを駆使して立て直し策を講じますが、大手といえども、回転寿司業界には疎いコロワイドの戦略はどれも裏目に出て、短期間で次々トップが入れ替わるという非常に不安定な経営状況に陥ってしまいます。

 そして大手4社で「一人負け状態」のままコロナ禍が襲い、史上最大のピンチを乗り切る苦肉の策として外部人材の田辺前社長がヘッドハントされた、というわけなのです。悪しき業界風土、最悪の経営環境、人選ミス......。悪条件が重なり、今回の事件につながったといえるでしょう。

 果たしてこの先、「かっぱ寿司」の復活はあるのか。辞任した田辺前社長の後任として、コロワイド傘下でステーキ店や焼肉店に加え別ブランドの回転寿司チェーンを運営するアトム(東証スタンダード上場)の山角豪社長が当面社長を兼務する、との発表がありました。

photo 山角社長の経歴

 早急な企業風土改革が求められるこの状況下で、上場企業同士の兼務社長発令とは、コロワイドの危機感はあまりに薄いのではないかと感じられます。しかも山角社長もまた、すかいらーくグループの役員を経て20年にヘッドハントでアトム社長に就任しているという、業界ドップリの人物です。かつての業界リーダー「かっぱ寿司」復活の道は遥か遠い、と感じるのは筆者だけではないでしょう。

photo かっぱ寿司の店舗

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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