「かっぱ寿司」と「はま寿司」 衝撃の社長逮捕劇を15年前の“因縁”でひもとく(1/3 ページ)

» 2022年10月16日 07時57分 公開

 今、回転寿司業界が揺れています。話題の主は、業界トップの「スシロー」と元業界トップの「かっぱ寿司」です。6月以降、スシローの相次ぐ不祥事が話題になっていたところに、今度は「かっぱ寿司」の社長逮捕という驚きのニュースが飛び込んで、一体、この業界はどうなっているのかと「?」マークが飛び交っている、そのような状況にあるのです。本稿では2回に分けて2社の「事件」の背景に迫りつつ、業界に横たわる問題点を探ってみます。まず今回は、現職の社長逮捕という驚きの事態を招いた「かっぱ寿司」から。

photo 回転寿司のイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

社長自ら競合の機密情報不正取得

 「かっぱ寿司」田辺公巳前社長(10月3日辞任)の逮捕容疑は、不正競争防止法違反です。前勤務先の回転寿司チェーン「はま寿司」から商品仕入データや店舗別売上データなど営業機密情報を不正に入手した疑いで、本人も容疑を認めているといいます。

photo 社長の書類送検に関するプレスリリース

 東証プライム上場企業のトップが自ら他社の情報を盗む不正に手を染めていたという、「かっぱ」ならぬ「かっぱらい」だったという恥ずべき下劣な犯行です。不正入手と知りながら、その情報を営業活動に活用していた「かっぱ寿司」の法人としての所作も、大いに非難されるべき由々しき問題であると考えます。

 田辺前社長は2020年11月に取締役を務めていた「はま寿司」から「かっぱ寿司」に転職しており、犯行は「はま寿司」から内定が通知された後の同年9月以降に行われたとされています。転職後も、元部下を通じて「はま寿司」の機密情報を入手していたといいます。この件で「はま寿司」は21年7月、「かっぱ寿司」を告訴しています。

photo 告訴に関するプレスリリース

 田辺前社長が入手した情報は誰の目にも明らかな機密情報であり、それを受け取った「かっぱ寿司」サイドがそのデータを使って仕入原価比較表などを作成して営業活動に活用していたという、まさに組織ぐるみのコンプライアンス違反なのです。警視庁はこの点を重視して、法人に対しても不正競争防止法違反で書類送検しています。

(関連記事:「かっぱ寿司」社長、「はま寿司」情報不正取得で逮捕→辞任 競合の現役社長が兼務で後任に、理由は?

 本来であれば、転職者の、しかも幹部社員候補が競合の古巣から機密情報を横流しするような行為があったならば、即刻解雇あるいは内定段階であれば取り消しをしてしかるべきところです。

 不正に取得した情報をありがたく使用しただけでなく、このようなコンプライアンス意識ゼロの人物をトップにまで取り立てるというのは、もはや「かっぱ寿司」の組織風土はコンプライアンス面で崩壊していると言わざるを得ません。組織は頭から腐ります。「かっぱ寿司」は早急に組織のコンプライアンス意識の立て直し策を構築し、組織風土改革に着手しなければ、大手4社からの脱落は免れ得ないのではないでしょうか。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.