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リモートの職場トラブル、落としどころは? 「束縛する上司」と「スマホで株式投資をする部下」(2/3 ページ)

» 2022年10月17日 05時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

何度も連絡して束縛する上司

 一方、上司が気を付けなければならない行為もある。

 管理職の中には「在宅中の部下がちゃんと仕事をしているのか不安でしょうがない」という人も少なくない。そのため在宅勤務中に上司から1日に何回も一方的に業務指示のメールを送ってしまうケースもあるという。

 オフィスであれば上司に「今はこれだけ仕事を抱え、忙しくてできません」と、しぐさをまじえて伝えることができるが、オンラインだと断りのメールも入れにくい。

 上司の頻繁すぎる連絡や仕事の確認は部下にストレスなど過度の負荷を与え、健全な職場環境を損なう恐れもある。実際にオンライン会議を一日に何度も行い、結果的に部下の仕事を妨害してしまう上司もいる。

 前出の広告業の人事部長は会社でのこんな事例を紹介する。

 「ほとんど毎日出社している部長がいる。部屋に部下がいないと安心できないのか、しょっちゅう在宅勤務の部下をZoomで呼び出しているそうだ。あるとき特に用事もないのに『皆出て来い、元気か?』と呼び出した。女性社員の一人が化粧をしたくないのでマスクを着けて顔を出したら『なんで家にいるのにマスクをしているんだ!』と叱られたそうだ。女性社員から人事部に『余計なお世話。そこまで言う権利が管理職にあるのか』と、文句を言ってきた」

過敏に反応するのは悪手? スマホで株式投資をする部下もいるが……

 テレワーク中の部下の仕事ぶりに気を遣うのはいいが、そこまで過敏になる必要はないと語るのは電機メーカーの人事部長だ。

 「正直言って在宅勤務中に部下が何をしているのか分からないし、何をしようが放置しているのが実態だ。社員の中には、スマホで株式投資をしている者もいるだろうし、会社が貸与しているPCを使って転職のための面接を受けている社員もいるかもしれない。実際に共有している仕事のスケジュールに『外部面談』と書いていて、後で『外部面談のお客さんは誰だ』と聞いたら答えられないということがあった。転職の面接を受けていたことぐらい想像がつく。それを規制するには情報システム部と連携して会社が貸与している携帯とPCをチェックしないといけないが、面倒だし、目をつぶるしかない。自分の裁量で仕事を効率よくやっていれば、何をしようがあまり問題にしていない」

テレワーク中の部下の勤務態度には目をつぶるしかない側面も(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 逆にオンラインだからと安心して過度にプライベートに口を挟むとハラスメントに発展しかねない。在宅勤務特有の労働問題としてパワハラ、セクハラなどのリモートハラスメント(リモハラ)も発生している。

 コロナ禍の初期は、オンライン会議の画面の背景に自宅の風景が写ることを嫌がる社員もいた。操作によって画面の背景を変えることができるが、機能を知らなかった女性社員の部屋に干している下着が映ってしまい、参加者から揶揄(やゆ)された、という話も聞く。

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