“業務の適正な範囲”とは業務上指揮監督や教育指導において、必要かつ合理的と認められる範囲を指します。このように書かれると「何となく分かったような気はするけどそれが分からないんだよね」と思われた方も多いのではないでしょうか? そこで、もう少し砕けた言い方をすると「世間一般的に考えて、それは業務指導の範囲だよね」といったところでしょう。
私自身も、顧問先から「これってパワハラになりますか?」と質問され、即答できないことが少なからずあります。こういうケースでは、大変申し訳ないのですが「ご自身は客観的にどう思われますか?」「他の社員の皆さんはどう感じていますか?」と逆質問をして、その会社の適正な範囲を参考にアドバイスをします。
もちろん、会社の文化や風土がそもそも“世間一般的”の感覚から外れていれば問題外なのは言うまでもありません。なお、私の言う“世間一般的”は他社事例を参考に考えることが多いです。
「パワハラと言われるのが怖くて、何も言えないです」
藤川さんのように考えてしまう管理職は少なくありません。これはやはり、極端な情報があふれかえっていることが原因の1つでしょう。
エージェント(東京都渋谷区)が公表したハラスメントカオスマップ2021年版では、実に47項目ものハラスメントが掲載されています。要するに、何かしら自分の意にそぐわないことがあれば「それって○○ハラですよね」と言い、そして、言われた方は「そうなのかな?」と思考停止してしまうのです。
こんな事例がありました。ある飲食業での話です。男性店長が学生アルバイトの肩をたたき、「テーブル片付けといて」と指示したところ、「それはハラスメントですよ」と言われてしまい悩んでいました。
店長に肩をたたいた経緯を聞いてみると、「声がけしたけど気が付かなかったので肩をたたきました。ホールで大声を出すよりは良いと思ったのですが……」とのことでした。当たり前ですが、業務上必要な行為であればハラスメントにはなりません。その学生アルバイトに「どの辺がハラスメントだと思ったのか?」と確認してみたところ、「触る行為はハラスメントだと学校で習った」と言っていました。
みなさんはこの事例を聞いてどう思いますか?
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