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債務超過で「突然の経営危機」──GMO安田CFOが、乗り越えられた理由対談企画「CFOの意思」(4/5 ページ)

» 2022年10月28日 16時00分 公開

間違いが分かって、飛び上がって喜んだ

安田: 撤退することを決意し、シミュレーションした結果、36億円の債務超過もあり得るという状態でした。そのバランスシートを持って、あちこちの金融機関へ「こうなる可能性があります」と見てもらいに走り回りました。

 撤退して止血しないといけない。とはいえ、実行すると銀行のコベナンツ(財務制限条項)に抵触してしまう。

 そんな板挟みのときに、良くしてくださったのがあおぞら銀行でした。当時専務だった石田(克敏)さんがその説明を聞いて「分かりました。他の銀行が手を引くようであれば、うちに言ってください、全面的に面倒を見ますから」と言ってくださった。その会議室をあとにして、エレベーターのドアが閉まったときに、涙が出てきてしまったんですよね。それを熊谷が「安田が男泣きしてました」と言うようになって。

嶺井: 私も日経新聞で読んでぐっときましたよ。「ああ安田さんそんなに大変だったんだ」って。

安田: 余談ですが、このエピソードが熊谷のインタビュー記事で過去2回ほど記事になった際に、「男泣き」から「号泣」に変わっていて、次はどのような表現になるのかとドキドキしております(笑)。

 おまけですが、こんな重要な撤退時のシミュレーション計算を間違えていて、実は債務超過に陥らずに済みました。計算を間違えたにもかかわらず、当時頑張ってくれていたチームみんなで飛び上がって喜んだというオチが後日談として残っています。

 そして、そのときのあおぞら銀行との関係から、合弁のネット銀行を運営するという運びになりました。

嶺井: そういう大変なときに支えてくれる人には感謝しかないですね。あおぞら銀行のことをずっと大事にされていますよね。

安田: そうですね。三井住友銀行さんなどメガバンクさんとも、GMOペイメントゲートウェイが合弁でやらせていただいていて、もちろん大切なお取引先ですが、やっぱりそのとき一番支えてくださったのはあおぞら銀行さんですから。

撤退を覚悟する中、なんとか繰り出した「ウルトラC」の技

嶺井: この、ギリギリの数値のところで持ちこたえるために、銀行とコミュニケーションを取ることの他、どのようなことをしましたか。

安田: 過払いの引き当て問題が出てきたときに、撤退を覚悟しましたが、それによる金融機関の反応がどうなるかを最も心配しておりました。GMOネットカードという社名に変わっていたオリエント信販は、さまざまな銀行からお金を調達してローンを出していたわけです。

 なので、やったことは2つですね。お金をとにかくかき集めることと、後は金融機関のいろんな反応を想像し、備えることです。

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