朝倉未来プロデュースのBreakingDown6がバズった理由 過激化に必要なリスクマネジメントストーリー追求とのジレンマ(3/5 ページ)

» 2022年11月03日 05時00分 公開
[武田信晃ITmedia]

“ほぼ格闘技のような感じ”という特性

 なぜBreakingDownは多くの人に受け入れられたのか。これは人間の闘争本能による部分が大きいと思われる。その本能は、人より優れているところを見せて認めてもらいたい承認欲求に立脚していて、SNS時代が到来したことによって可視化されやすくなった。

 素人の戦いであれ、プロの競技であれ、戦いには人間の闘争本能を刺激する面がある。まして、BreakingDownは基本的に素人の大会だ。「プロの戦いは遠い世界」と認識しているアマチュアも、「これなら俺でも参加できるかも」と思えるように設計してある。その証拠に、BreakingDown6への一般応募者は、過去最大の2000人に達した。

 格闘家には経歴に傷のある選手も少なくない。そうした選手にとって格闘技は現実世界でセカンドチャンスを与えてくれる数少ない居場所でもある。朝倉未来、過去にはボクシングの辰吉丈一郎、海外ならマイク・タイソンなど枚挙にいとまがない。彼らが再び人生を成功させていく過程は共感を得やすいのだ。

 朝倉未来もYUGOも、会見などで「ストーリー性」というキーワードを何度も発している。オーディションを利用し、ストーリー性を加味させることに秀でていて、その演出に視聴者は感情を移入するのだ。

 だが、ここでBreakingDownはジレンマに陥る。ストーリー性を追求しすぎるとチープなエンタメになるからだ。一方で本格的な格闘技路線に振れば、RIZINやK-1と競合することになってしまう。かなり微妙な“さじ加減”を求められるのだ。

 YUGOによると、第1回の大会から「一般人対プロ」「プロ対プロ」「1dayのトーナメント」などいろいろなパターンの試合を60以上にわたって試行し、1分1ラウンドの試合が面白いかどうかをずっと確認していたという。

 BreakingDownはイベントとしての性格上、常に前回以上のものが求められる。それは企業が常に「前月比〇%増、前年比〇割アップ」などの成長を求められるのと同様だ。YUGOは以前のインタビューで「現在のフォーマットでやり続けたらそのうち飽きられるという課題感はある」と答えている。それゆえに6回目は新たに前田日明がプロデュースする総合格闘技大会「THE OUTSIDER」との対抗戦を打ち出した。

THE OUTSIDERとの対抗戦を打ち出した
高垣勇二(左)と対戦する山川そうき

 今後のBreakingDownにとっての切り札は、現在プロデュース側に回っている朝倉兄弟の参戦だろう。当人たちも前向きなコメントを発している。来年からこのフォーマットでの世界展開も予定していて、これが成功するかどうかも一つのカギとなる。

としぞうと対戦するジョーブログ

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