「ジャニーズ騒動」から学ぶ、中堅・若手が逃げる組織の問題スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2022年11月08日 10時50分 公開
[窪田順生ITmedia]

同族経営がハマる罠

 それくらい日本ではありきたりな会社の形なので、「同族経営」自体が悪いわけではない。ただ、この会社がジャニーズ事務所のように巨大な既得権益を握っているような場合、ちょっと問題がある。

 社員たちの意志に反して、経営側が新事業や事業拡大をするよりも安全な現状維持へ流れがちになってしまうのである。

 同族経営の特徴のひとつに「家を守るというバイアスがかかる」ことがある。例えば、同じビジョンを共有した友人たちとみんなで創業したベンチャーなんかは、そのビジョンを達成することに重きを置くので、思い切った経営判断や改革に踏み切ることもできる。

 が、同族経営の場合、それは難しい。創業家出身の社長とプロパーの経営幹部の間にどうしても「溝」ができてしまうからだ。叩き上げの幹部は社員の声を吸い上げて、会社をより良い方向へ進めるための経営判断をしたい。だが、創業家出身社長が何よりも優先したいのは「家を守る」ことだ。会社の経営を安定させて、自分の子どもなどの血縁者に不安なく引き継ぎたいという「親心」「身内びいき」が強くなって経営判断を保守的にする。

 だから、そんなに無茶や冒険はできない。手堅く、従来のビジネスで稼げるのであれば、それに越したことがない。つまり、事業拡大や新分野への挑戦よりも、現状維持に流れがちなのだ。

 もちろん、そうではない同族経営企業もたくさんある。例えば、星野リゾートも同族経営だが、星野佳路社長などは挑戦を恐れているイメージはないだろう。ただ、そういう人は少ないから目立つのであって、ほとんどの同族経営は現状維持志向が強い可能性があるのだ。

 なぜかというと、同族経営が多くを占める日本企業の9割は現状維持を延々と続けているという厳しい現実があるからだ。

95%を占める281.3万社は「規模変化なし」(出典:中小企業庁)

 19年の『中小企業白書』の中に「存続企業の規模間移動の状況(2012年〜2016年)」という興味深いデータがある。これは16年時点で廃業せずに存続している事業者295万社が、4年前の12年からどれほど、従業員を増やすなどして企業規模を拡大させてきたのかを調べたものだ。なんと、驚くなかれ、規模拡大に成功したのはなんと7.3万社、規模縮小は6.7万社で、95%を占める281.3万社は「規模変化なし」だったのだ。

 4年経過しても従業員を増やせていないし、事業拡大もできていないし、新しい事業も始めていない。ただ、従来のビジネスを、従来のやり方で続けている企業が大多数なのだ。

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