かつてジャニーズを「手本」として仰ぎ見ていた韓国のエンタメ企業が、アイドルに英語を覚えさせて続々と海外進出を仕掛けている。BTSがグラミー賞ノミネートなど華々しい成果を残しているのと対照的に、ジャニーズは「内向き志向」だと言われている。実際、Travis Japanがジャニーズ初の全世界デビューを果たしたが、あくまで活動の軸足は日本である。
ネットの活用にも積極的ではなく、所属アイドルがYouTubeチャンネルを開設したのは2018年で、他のタレントと比べるとかなり遅い。ちなみにこれも、10年に「滝CHANnel」を始めて、いち早くYouTubeの可能性に目をつけていた滝沢氏が、副社長になって進めた「改革」のひとつとされている。
では、なぜこのような現状維持に陥ってしまうのかというと、「現状維持でも十分過ぎるほど稼げるから」ではないか。
先ほども申し上げたように、ジャニーズ所属タレントは、NHKから民放まであらゆるテレビ番組に出演していて見ない日はない。競合するような男性アイドルグループを抱えるライバル事務所も存在しないので、これまで通りに人気を独占できるので、コンサート、グッズ販売、ファンクラブで十分に稼ぐことができる。
つまり、国内で莫大なカネを生む人気者たちに、わざわざ海外進出などの「バクチ」をやらせる必要がないのだ。YouTubeも同様で、韓国アイドルたちのチャンネルのように、ネット上で彼らの素顔が見られて人気者になってしまうと、「テレビに出ている」というジャニーズならではの強みがなくなってしまうのだ。
そこに加えて、ジャニーズ事務所が現状維持に流れてしまっているのは、多くの日本企業に共通している形態も大きい。それは「同族経営」だ。
ジャニーズ事務所の最終意思決定者は、藤島ジュリー景子氏だ。同氏はジャニー喜多川前社長の姪にあたり、ジャニー氏から全権を引き継いだ。つまり、同社はいわゆる「同族企業」だ。
国税庁の会社標本調査(2020年度)によると、日本で活動中の会社(単体法人)の96.3%は同族企業で、268万6862社に上る。特に資本金1億円以下の企業では9割を超え、1億円超の企業でも6割近くが同族だ。
資本金1000万円で、従業員が170人(公式Webサイト)の同族経営のジャニーズ事務所は、典型的な日本企業と言えるのだ。
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