リテール大革命

お客は「どの弁当」の前で立ち止まっているのか ベルクの分析が面白い「実証実験」の結果(3/4 ページ)

» 2022年11月16日 08時05分 公開
[土肥義則ITmedia]

昼と夜で通過人数が違う

 データ分析を担当している、販売運営部の久保田聡さんはこの数字を見て驚いた。「これまでの経験と勘で、滞留率が高いのはAかDと思っていたのに、Bという結果は信じられなかったですね」と振り返る。思い込んでいたのは、自分だけなのかもしれない。ということもあって、結果を知らせずに、他のスタッフにこのような質問を投げかけた。「滞留率が高かったのは、どのエリアだと思うか?」と。

 多くの人は「A」または「D」と答えていて、「B」と答えたのは数人だけ。ただ、通過人数をみると、やはりAとDが多い。立ち止まって購入している人も多いが、通過している人も多いことが見えてきたのだ。こうしたデータを受けて、我孫子店ではどのような手を打つことができるのだろうか。

 「滞留率が高い『B』に置いている商品を『C』に並べたらどうなるのか。『B』よりも『C』のほうが通過人数が多いので、以前よりも『B』の商品が売れるようになるかもしれません」(久保田さん)

 このほかにも、考えられる手はある。例えば、夜の時間帯だ。夜になると、AとDの前を通る人が増える。なぜか。仕事が終わって「今日の晩ご飯は、お弁当にしよう。いつものカツ重かな」といった感じで、目的買いの人が増えるからである。

 一方、BとCの前を歩く人は少なくなる。なぜか。AとCの背後には総菜などを扱っているので、「晩ご飯のおかずはどれがいいかな」といった人たちも集まる。お弁当との相性の良さもあって、多くの人が歩いているわけだが、BとCの背後には、自炊が必要な商品が並んでいる。夜遅い時間に家で自炊を始める人は少ないようで、BとCを通過する人は減少するのだ。

人気のカツ重
BとCに陳列されているお弁当

 昼と夜で通過人数が違うことも、データで示されている。であれば、BとCに並んでいる商品をAとDに近づければいいのかもしれない。たくさんの人が通過しているので、BとCの商品が目に入って「買ってみようかな」といった人が増えることも考えられる。

 「AIカメラを導入する前は、商売人としての経験と勘に頼る部分がありました。『これまではこうだったから、こうなるよね』といった形で進めていましたが、いまは違う。『数字がこうなっているから、このようなことができるよね』といった話ができるようになりました」(久保田さん)。お客はお弁当の周りをグルグル回っているが、ベルクのスタッフは仮説と検証をグルグル回しているようである。

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