「過去最大の投資」──ABEMA責任者が語るサッカーW杯放映権獲得の舞台裏と狙い『ウマ娘』マネーが後押し(3/5 ページ)

» 2022年11月20日 07時30分 公開
[樋口隆充ITmedia]

放映権料は推計200億円? 「過去最大の投資」

 民放とNHKを中心とした放映権交渉が暗礁に乗り上げ、日本での無料放送が一時危機に瀕したものの、ABEMA参入という意外な形で収束した。放映権料の総額などについて聞くと塚本局長は「守秘義務もあり、詳細は答えられない」とした上で「ABEMAとして過去最大の投資であることは間違いない」と述べた。

photo 放映権獲得は過去最大の投資となった(提供:ゲッティイメージズ)

 講談社が発行する週刊誌「フライデー」は5月12日付けの記事で、ABEMAが支払った総額について、複数のテレビ局関係者の証言から200億円と推定している。

『ウマ娘』のヒットで実現した巨額投資

 詳細は明らかにならなかったものの、巨額投資であることは認めた塚本局長。その原資として、あのヒットゲームの存在は欠かせないという。それは、グループ会社のCygamesが手掛ける『ウマ娘 プリティーダービー』だ。

photo 『ウマ娘 プリティーダービー』(出典:公式Webサイト)

 実在する競走馬を擬人化したキャラクター「ウマ娘」を育成するという斬新な内容がユーザーの心をつかみ、21年2月のサービス開始から約7カ月で1000万ダウンロードを突破。目の肥えた競馬ファンもハマっているとされている。

 最近では文藝春秋社の雑誌「Number」とのコラボ号が、10万部を突破するなど、その勢いはとどまることを知らない。

photo 文藝春秋社の雑誌「Number」とのコラボ号

 当然のことながら、事業の稼ぎ頭になっており、リリースした21年通期決算(20年10月〜21年9月)では、ゲーム事業単体の売上高は2627億円(前期比68.6%増)、営業利益は964億円(同217.9%)。ウマ娘のヒットで、同社は1043億円の営業利益を記録した。

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photo 21年通期決算

 22年通期決算(21年10月〜22年9月)はその反動で、ゲーム事業単体の売上高は2283億円(同13.1%減)、605億円(同37.2%減)となったが、高い水準を維持している。

photo 22年通期決算でのゲーム事業の業績

 塚本局長は巨額投資実現の背景に「グループとして、広告事業本部、ゲーム事業部、関連会社などの全体の後押しがあったため」とした上で「ウマ娘の影響は確実にある」と、“ウマ娘マネー”が要因の一つになったことを認めた。

 ABEMAは開局6年を迎え、さまざまなタイミングが重なった事も大きいという。塚本局長は「18年のロシア大会では放映権獲得の話は社内で出ていなかった」と明かし、その理由を「ユーザーの視聴環境、コンテンツの中継技術の環境、ユーザー適性など、色々な側面の検討タイミングではなかったのではないか」と推察する。

 「開局から6年が経過し、コンテンツが充実したことでユーザー数が増え、配信の技術力向上、グループとして金銭的なバックアップがあったため実現した」(塚本局長)

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