「大企業=成功」という呪縛から解放されよ 魅力的な職場に出会うにはどうしたらいいのか大愚和尚のビジネス説法(3/3 ページ)

» 2022年11月24日 10時00分 公開
[大愚元勝ITmedia]
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自分で起業するか、ベンチャーに入るのです。保身のために大企業に入ろうとする時点で、本当に優秀だとはいえません。

 魅力的なベンチャーは、優秀な人を求めています。けれども、ベンチャーの求める「優秀さ」とは、必ずしも学業成績のことではありません。想定外の出来事への柔軟性、給与の多少に動じない主体性、未知の体験への好奇心、違いや工夫、一見意味のないことを楽しめる子ども心、成果や失敗、喜びや痛みを仲間と分かち合える共感力。

 そんな力を持った人が、真に優秀な人材なのです。

大企業に行くことが全てではない そのワケは?

 大企業に入ると、名誉欲も満たされるし、仕事は定時で終われるし、役割分担もハッキリしているし、給与も、福利厚生も、休みも手厚くもらえます。大きな金額、大きな仕事に関われて、広い人脈が築けるなどのメリットもあります。しかしデメリットもあります。

 大企業はトップでも皆、サラリーマンです。自分の身銭を切って勝負しているわけではありません。自然と保身に走り、短期的な視野で物事を考えてしまう傾向は否めません。19年から始めた、YouTube上のお悩み相談番組『一問一答』には、仕事に悩み、生き方に迷う人々からの相談が相次ぎます。その中には、大企業に勤める人々からの嘆きや相談が少なくありません。

 「仕事はいただいている。給与や休みにも不満はない。親も家族も満足している。けれども、自分で成長を感じられない。本当にこのままここに居て、いいのだろうか」

 「大企業とて安泰ではない。危機感はあって、提案もある。けれども、取り合ってもらえないし、上司は保身ばかり考えている」

 自己の成長や会社への貢献を真剣に考える人ほど、大組織の中にあって、閉塞感や無力感を感じているようです。知名度や給与が高くても、成長を感じられない仕事と、まだよく知られていないけれど、魅力的な商品やサービスを提供する仕事。特に若い人にはぜひ、安定して見える大企業という選択以外にも、不安定に見えるけれど、チャレンジと成長のあるベンチャーという職場があることを知っていただきたいと思うのです。

「魅力と厳しさ」が採用を増やし、離職を減らすカギになる

 最後になりましたが、私のもとにはよく、「どうしたら採用を増やし、離職を減らすことができますか」という、経営者からの相談が届きます。それに対する私の答えは、「魅力と厳しさ」です。

 応募がないということは、魅力がないということ。離職が多いということは、厳しさがないということ。

 「魅力」とはひきつける力です。私がいう魅力とは、給与の額や休みの多さ、福利厚生の充実などのことではありません。もちろん、それらを充実させる企業努力をすることは大切でしょう。けれども、他より多い給与、他より多い休みなどを提示できなければ人が集まらないということは、職場にそれ以外の魅力が無いという証拠です。安定を求める人ばかりを集めても、真に魅力的な職場にはなりません。魅力的なサービスや商品を提供することもできません。

 「魅力」が先、「安定」は後です。

 「離職」は、働く喜びを感じられないときに最多化します。人が「面白くない」と感じるときは、その人が成長していないときです。人は必ずしも報酬のためだけに働くわけではありません。大企業で十分な給与と休暇をもらえても、離職する人がいます。零細企業で給与も休みも満足にもらえなくとも、仕事に行くことが楽しくて仕方ないという人もいます。その違いは何かというと、成長です。成長のために欠かせない要素は厳しさです。

 意外に思われるかもしれませんが、人類の歴史をみれば、厳しさが進化を促したことは明白です。ただし、ここでいう厳しさとは、怒ったり、激務を与えたりすることではありません。厳しさとは一貫性です。知識、技術、経験など、部下の成長のために、情熱と忍耐をもって、一貫して適度なハードルを与えられる上司や環境がある職場。そんな職場こそ、離職が少ないものなのです。

 職場は、家よりも長く居る場所です。仏教では「正命(しょうみょう)」と呼んで、正しく、楽しく、やりがいのある仕事に従事することを重視しています。どんな会社、どんな商品、どんなサービスにもライフサイクルがあります。無情の世の中にあって、絶対安定、絶対永続する職場などありません。

 どんな職業、どんな職種、どんな役職にも苦楽があります。一切皆苦(いっさいかいく)の世の中にあって、楽しいこと、楽な仕事ばかりではありません。どうせ働くのなら、主体的に喜んで働きたいものです。どうせ生きるなら、主体的に楽しんで生きたいものです。仏教ではそのように働き、生きる人のことを、主人公と呼びます。

 どんな職場にあっても、強制されるのではなく、主人公として働きたいものですね。

著者:大愚元勝(たいぐ げんしょう)

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佛心宗大叢山福厳寺住職。株式会社慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。駒澤大学、曹洞宗大本山総持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。

HPにて「お悩み相談」を受け付けているほか、YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」で国内外から寄せられた相談にも対応する。著書『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、『人生が確実に変わる 大愚和尚の答え』(飛鳥新社)など。


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