「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶、大愚和尚(たいぐおしょう)が、ビジネスにまつわる疑問、悩みを“仏教の視点を持って”解決。今回のテーマは「大企業に勤めること=成功か?」。人材流動性が高まる昨今、転職を検討している人は、どういう基準で企業を選べばいいのか? 和尚が自身の過去を振り返りつつ説く。
私は寺の住職ですが、会社経営者としての顔もあります。また、経営者向けにコンサルをしたり、魅力ある人や事業に投資したりもしています。そんなことを書くと、「僧侶が経営者?」と揶揄(やゆ)する人もあろうと思います。しかし、私が僧侶でありながら「経営」にも携わっているには理由があります。
私は、禅寺の弟子として育ちました。3歳で経本を持たされ、5歳で法事デビュー。10歳で得度(とくど)をしたのですが、厳しい師匠、堅苦しいしきたり、重苦しい伝統に反発し、17歳のときに「僧侶だけにはなるまい」と心に決めました。
お寺を離れ、自立するためにはお金が必要です。そう思いたった私は、お寺の一室を借りて英語の塾を始めました。わら半紙に手書きで宣伝文句を書いてチラシを作り、学校帰りに住宅街にポスティングを続けて生徒を集めたのです。週1回、2クラスだけの営業でしたが、高校2年から3年までの1年間で150万円ほどの貯金ができました。今思えば、私にとって初めての起業経験でした。
大学進学後は、同じように英語塾を営んだり、アルバイトを掛け持ちしたりして、月に60〜70万円ほどの収入を得ていました。そして大学卒業後は、海外へ出ていくつもりでした。しかし、大学の仏教科に在学しながらアルバイトばかりに精を出している私を心配してくださったのでしょう。恩師から「せっかく寺の息子として育ったのだから、若いうちにちゃんと仏教を学び、修行しておけ」と諭されたのです。私はそのアドバイスに従って、曹洞宗大本山總持寺(そうじじ)に修行に入り、さらに大学院に進学して、仏教を広く学びました。
けれども、私の将来への迷いが消えることはありませんでした。依然として僧侶になることへの抵抗があったのです。
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