クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

マツダの中期経営計画を分析する池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2022年11月28日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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30年時点でのBEV想定比率は「25〜40%」

 ということで、現在これがどう転ぶかは予断を許さない状況だ。マツダとしては本当に内燃機関中止が決まった場合に備えて、準備をしておかなくてはならない。そこで、30年時点でのBEV想定比率を従来の25%から「25〜40%」として上振れの可能性を見込むとともに、EV専用のスケーラブルアーキテクチャを前倒しにして計画に盛り込んだということである。

 しかしながら、専用シャーシーを作ったところでバッテリーの供給にめどを付けなければ、机上の空論で終わってしまう。そこで電池調達に次の手を打った。かつて日産とNECが合弁で作ったエンビジョンというバッテリーメーカーがあったのだが、すでに中国資本に売却されており、現在の社名をエンビジョンAESCという。

 このエンビジョンAESCと提携して、バッテリー調達の安定とコストダウンを図った。ただしこれではインフレ抑制法の税控除の対象外となるはずで、本気で米国のZEV規制をクリアしていくためには、米国圏でのバッテリー調達を実現しなくてはならないはずだが、その計画はまだ盛り込まれていない。

3つのフェーズ(出典:マツダの発表資料)

 ということで、米国や欧州の規制に振り回されて変更を余儀なくされた中経ではあるが、その軸の部分は、さまざまな状況に対応しうるマルチソリューションであることは変わっていない。その考え方に筆者は賛同するのだが、一方で暴風が荒れ狂うような環境規制の政治的駆け引きの中で、不測の事態が起こる可能性はないわけではない。

 もっといえば、アグレッシブに過ぎる環境規制が施行されたとしてもそれが本当に継続できるかどうかも不明である。果たして、マツダはうまくかじを取っていくことができるだろうか。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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