水素エンジンが急速に注目を浴びている。2021年、トヨタがスーパー耐久レースへカローラスポーツに水素燃料仕様としたパワーユニットを搭載して参戦してからというもの、その熟成ぶりと他メーカーも巻き込んで開発が一気にヒートアップしている。
そもそも水素エンジンは1990年代から2000年代かけて開発されていた。マツダやBMWが実用化を目指したものの、インフラが十分に整っていなかったこともあって、実証実験レベルで終わってしまい、人々の記憶からも消えていた存在だった。
しかしインフラはFCV(燃料電池車)の登場により、2000年代とは比べ物にならないほど(といってもまだ完全普及にはほど遠いが)整えられつつある。つまり燃料電池による水素利用によって、再び水素エンジンの可能性を引き上げたのである。
燃料電池に比べ、水素エンジンを利用するメリットはそれほど多くはない。エネルギーの変換効率から言えば燃料電池のほうが高く、モーターで走行したほうが同じタンク容量では航続距離を稼げるのは明白だ。
純度の低い水素が使える、というのは燃焼させる水素エンジンの持つメリットではあるが、インフラを考えれば燃料電池用の純度の高い水素と、水素エンジン用に純度の低い水素の両方を用意するのは負担でしかない。
水素エンジンは何よりもゼロカーボンでエンジンが使える、ということが魅力であり、エンジンを使うことは前々回の当コラムで解説したとおり、クルマとしての魅力が大きい。(関連記事)
ところで水素は現在のところ天然ガスから取り出しており、その時点でCO2を発生させている。エネルギー効率も化石燃料をそのまま使う場合と比べて3割前後は低下するため、燃料電池の変換効率も6割前後であることを考えれば、トータルでのエネルギー効率はガソリン車と比べて特出するほどではない。
実際、現時点での水素利用はエコでも何でもないのは、EVと同じだ。それでもガソリンやディーゼルエンジン以外の選択肢をもつことは重要であるし、ここからの技術革新や普及を目指すには、持続していく必要がある。
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