その理由は、広域型商業施設への出店を続けてきた無印の国内出店余地が飽和しつつあるということだろう。
それは会社の中期経営計画における「2030年の事業モデル」にも表れている。「生活圏における個店経営を軸とした地域密着型」の店舗の開発であり、「売上20億円の食品スーパー横など生活圏立地に600坪超の店舗」年間100店ほど出店していくという計画である。
今回の板橋南町は、2030年の事業モデル達成に向けた、都内バージョンの本格的実験なのである。
「食品スーパー隣地タイプの立地開発を進める必要がある」ということこそが、従来型の立地だけでは無印の国内事業成長の絵が描きづらいことの裏返しなのであろう。
図表1は無印の国内、海外の営業収益とセグメント利益の推移を示したものだ。コロナによる影響はみられるものの、国内、海外ともに成長基調は維持されていると言っていい。特に海外比率を約38%にまで伸ばしており、海外進出に成功している数少ない日本小売業の1社となっている。
ただ国内事業には陰りも見えていて、22年8月期の国内事業は増収ながら減益となったのだが、その要因について会社自身が明らかにしている。値引きセールの多用による増収に依存したことに加えて、輸送コストなどの上昇などで費用がかさみ、減益となったということだ。背景として、衣料・雑貨、生活雑貨の販売不振があると無印では分析している。
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