無印が熱心に日常使いの需要を取り込もうとする背景には、インテリア雑貨、生活雑貨などのマーケットで急速に存在感を持ちつつあるライバルたちの成長もあるだろう。
インテリア・生活雑貨店デコホームで大都市圏への進出が進めるニトリ、巣ごもり需要をテコに急速に成長し始めた3COINS、今や100円均一のいう軛(くびき)から脱してプチプラとして広く支持を受けつつあるダイソーを始めとする100円ショップ各社、これまで無印の独壇場であった雑貨類のマーケットの裾野を低価格帯業態が着実に侵食しつつあるのである。
11月16日の日経MJの第一面で「無印・セリア銀座になじむ〜日常雑貨ブランド力街頭で聞いた」(筆者も取材に協力し、コメントを提供している)という特集があり、コロナ禍を経て、いまやプチプラ業態の激戦区となっている銀座で、各社のイメージに関する消費者アンケートを行っていた。
結果の詳細は割愛するが、無印、セリア、スタンダートプロダクツ(ダイソー)、3COINS、が、今や並列のライバルとして語られているというところに注目したい。
こうしたプチプラ各社は、無印の世界観への共感などに関心のない一般的な消費者に対して、無印を模倣した機能を、より低価格で提供することで、プチプラのマーケットを拡大しつつある。無印も500円以下の雑貨、消耗品で構成されたMUJI500という新業態を投入して対抗しているが、これは限られた商品群とならざるを得ない。
図表5はざっくりしたカジュアル生活雑貨のポジショニングイメージを図にしてみたものだ(イメージなので詳細な違いはご容赦願いたい)。
価格とパフォーマンスの高低で生活雑貨ブランドを分類した。パフォーマンスが高く、中価格の無印が普段使いニーズを獲得しようとすれば、いまより低価格帯に降りていかねばならない。しかし、今ではニトリデコホームもいれば、3COINSもいるし、ダイソーのスタンダードプロダクツもそのポジションに狙いを定めている。さらに言えば、セリア以外の100円ショップは物価上昇の流れの中で、本業においても脱100円、複数価格帯への進出を少しずつ進めている。
無印がマーケットの裾野を取り込むと宣言したとしても、そこには「100均以上無印未満」のプレイヤーが急速に存在感を増してきている。
前期の無印は、この「100均以上無印未満」の競合に既存商品で応戦したため、値下げによる販促対応をせざるを得なくなって、利益を落としたのだとも考えられる。無印が、その「世界観」を毀損することなく、普段使いの市場を取りにいくのは簡単ではなさそうなのである。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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