「京成スカイライナー」がジレンマ 優先するのはスピードか停車駅増か杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2022年12月03日 09時52分 公開
[杉山淳一ITmedia]

青砥駅・新鎌ヶ谷駅停車でスカイライナーの空席を埋める

 スカイライナーを青砥駅に停める。もう1つの問題は所要時間の増加だ。特急列車の最大の魅力はスピードだ。所要時間を増やしたくない。なぜなら、乗客は「移動は無駄な時間」と思っているからだ。そこに至る考えは2年前にここで書いた。

「急行電車の混雑」「エスカレーター歩行」はなぜ生まれるか リニアの必要性と"移動"の意味(20年8月7日の本連載)

 スピードアップは良いことばかり。ライバルの列車より速いほうが乗客を獲得できる。速く目的地を折り返してくれば、必要な車両数も少なくて済む。

 乗客が求める特急の最大のサービスはスピード。次に乗り心地となるだろう。所要時間を短縮するためには、停車駅を減らしたい。理想としては始発駅で満席にしたい。もし空席があれば、その席は売り上げにならないからだ。列車の席は運行が終ったら売れない。空席は在庫にならずただ消えるだけ。丸損だ。

 そこで空席を埋めるためにどうするか。特急料金を下げて需要を喚起する方法もある。しかし、それでは全列車の収益が下がる。そこで「一部の列車の停車駅を増やし、利用者の乗車機会を増やす」という考えが生まれる。スカイライナーの場合は青砥駅停車が有効だった。当初は早朝夜間の臨時列車として始まったけれど、それが日中にも拡大された。

 実はこの時の青砥駅臨時停車では、京成上野発00分、20分、40分は維持されていた。早朝夜間は列車が少ないから20分サイクルに触れずに調整可能だったし、日中に拡大されたときもスカイライナーが減便されていたから、京成線内の列車時刻の変更で対応できた。ただし、11月26日のダイヤ改正はスカイライナーの全列車を復活させるから、厳密に20分サイクルを維持する必要がある。

 それならいっそ、すべてのスカイライナーを青砥駅に停めてしまえば20分サイクルを維持できる。直通先の影響も最小限で済む。しかし、スカイライナーのイメージダウンは必至だ。もう「都心から成田空港までノンストップ」とはいえないし、「日暮里〜空港第2ビル間36分」という宣伝もできない。日暮里〜空港第2ビル間は39分になるし、40分になるかもしれない。遅いというイメージがつくと、ライバルJRの成田エクスブレスに客を奪われかねない。だからスカイライナーの最速列車は維持したい。

 全列車の青砥駅停車はしない。その代わり、11月26日のダイヤ改正で青砥駅停車パターンのスカイライナーを新鎌ヶ谷駅にも停めた。新鎌ヶ谷駅当たりまで来ると20分サイクルダイヤでも余裕があるから停車駅増加は問題ない。

 新鎌ヶ谷駅は成田スカイアクセスのうち、北総鉄道線の区間だ。いままで北総鉄道線内の全駅を通過したスカイライナーが新鎌ヶ谷に停まれば、沿線の人々にとって成田空港に行きやすくなるし、日暮里・上野と新鎌ヶ谷間の着席指定列車として快適な利用を促せる。いままで平日早朝に1本だけあった印旛日本医大駅発、千葉ニュータウン停車の「臨時ライナー」と合わせて、北総線のサービス向上になる。

 これは北総線の値下げと合わせて、高運賃問題で高まっていた不満のガス抜きになるかもしれない。北総線高額運賃訴訟のきっかけは「スカイライナーが通過して線路使用料が入るのに、北総線の運賃が下がらない」だった。最も、現在の枠組みでは新鎌ヶ谷駅停車のスカイライナーの収入もすべて京成電鉄になるから、北総線運賃問題に関しては根本的な解決にはならない。

11月26日のダイヤ改正で20分間隔が復活。青砥・新鎌ヶ谷停車タイプができた(出典:京成電鉄、スカイライナー/成田空港アクセス
スカイライナーの青砥駅停車は都営浅草線方面からの集客、新鎌ヶ谷駅停車は成田空港というよりも、千葉ニュータウンと都心を結ぶ意図があるようだ(出典:京成電鉄、スカイライナー/成田空港アクセス

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