危機管理広報対応の実務にあたって何よりも重要なことは、事実関係を確定して説明することである。
世間からの批判にさらされ、何かしらコメントを求められている状況だとしても、事実確認が不十分なまま、そもそも「何が起こっているのか」「事実関係は」「組織としてどう対応していくのか」といったことが理解できていなければ、何を言ったらいいのかさえ判断できないだろう。そのような状態ではかえって不信感を抱かせ、批判が強まりかねない。次のような順序で対処していくべきである。
不祥事や炎上事案の発生が確認でき次第、調査チームを組成し、事実関係の調査・把握がなされているはずだ。調査により確認できた、問題の発生から現在に至るまでの経緯、判明した事実、そのうえで決定した今後の対応方針などを書面としてまとめる。そしてこれを「組織としての統一見解」とするのだ。
いちど不祥事が発生すると、各所から一斉に問い合わせがなされることとなる。そうなれば組織内で情報が錯綜し、混乱が発生するのもよくあることだ。そんなとき、組織としての統一見解が明示されていれば、それを軸として情報共有と意思統一が可能となる。
具体的には、次のような事項を集約するとよいだろう。
ビジネスにおけるプレゼンテーションや報告書でも同様だが、書面にまとめる際には「確認済の事実」と「推定による予測」や「今後の見通し」など推論は明確に分けて記載しておくこと。合わせて、事実関係については「どんな証拠があり、どのようにして事実と確認したのか」、予測や見通しについては「なぜそう考えられるのか」、という、それぞれの論拠を示しておかねばならない。
たとえネガティブな情報であっても、出し惜しみは新たな疑惑と不信感を生みだすだけだ。必要な情報か否か、判断するのはこの場合あくまで受け手側である。また事態の進展に伴って情報は常に変化していくものなので、都度アップデートし、常に最新版の情報を基に判断、行動していくべきである。
発表のタイミングとしては、「不祥事や炎上事案を確認した初期段階における速報」「事実関係の調査を開始し、基本的な概要を把握した時点での詳細報告」「事実確認がある程度完了し、今後の対応方針が確定した段階での最終報告」という最低でも3段階を基本とするが、回数にはこだわらず、新たな情報が判明するたびに小まめに情報更新していくことを勧める。
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