ラーメンは安くておいしい「庶民の食べ物」として長年愛されてきたメニューだが、近年その立ち位置が変わりつつある。かつては中華料理店や食堂の一メニューとして「庶民の食べ物」だったラーメンは、2000年前後から食材や製法にこだわる専門店が増え、「グルメ」として深掘りされていくようになった。インターネットの普及とともに興ったラーメンブーム以降、加速度的にラーメンのレベルは上がっていき、それに伴い価格も上がっており、昨今は“ラーメンインフレ”の様相を呈している。
果たして、いまだ現代のラーメンは安くておいしい「庶民の食べ物」なのだろうか。一昔前であれば、ラーメンといえば「1杯500円」というイメージもあったが、もはやこの価格帯で食べられるラーメンは激減している。一方で多くの消費者の意識は、1杯500円時代から変わっておらず、だからこそ昨今のラーメンは「高い」といわれがちなのだと感じている。
そんな中で、原油価格や食材価格などの高騰により、食品値上げのニュースが連日のように報じられている。薄利多売の飲食業界にとっては、企業努力では吸収出来ないほど今回の原価高騰の影響は大きく、それはラーメンであっても変わらない。「B級グルメ」「庶民の食べ物」として長らく愛されてきたラーメンだが、今や1杯1000円前後する店も増えてきた。ラーメンを構成する肉類や魚介類、調味料、小麦など、あらゆる食材の価格が上がっており、人件費も高騰している中で、ラーメンがこれまでの価格を維持することは不可能に近いだろう。
実際、東京商工リサーチが11月に発表した大手外食向けの値上げに関する調査では、値上げしたチェーンが最も多かった業態は「中華・ラーメン」だった。
一般的なラーメン店の場合、食材原価率は「30%前後」といわれている。単純計算で、売価800円のラーメンであれば、240円ほどが原価だ。仮に食材原価が20%上がったと仮定すると、売価は960円にしないと計算が合わない。さらに人件費や水道光熱費の増加分も加味すると、一杯1000円という価格は、原価率を考えれば決して高くはない。しかしながら前述したように、ラーメンについて消費者側のイメージは「庶民の食べ物」のままなので、高いお金を払おうと思う人はいまだ少数派なのだ。
値上げラッシュで家計も厳しく、多くの人が外食支出を引き締めている中で、原価が上がった分を価格に転嫁するだけでは到底理解は得られない。なぜならば、そのラーメンはそもそも1000円の「価値」や「満足感」を目指して作られたものではなく、原価高騰などの外的要因によって仕方なく1000円という価格になっているにすぎないからだ。
こうした難局の中、ラーメン業界が進むべき道は2つしかないと考えている。
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