このような分析ツール導入の狙いは、アナログな部分が多い店舗運営をスマート化すること。三菱地所の牧氏は、「データを指針として効率化につなげられているメリットがある」と話す。
「コロナ禍の店舗運営でもっとも役立っていると感じるのは、営業時間の設定です。店前通行者に対する入店者数の割合を見ると、感染者数の増減と明らかに関連していることが分かります。感染者数が増えると入店率がガクンと下がるため、それに合わせて営業時間を柔軟に変更しています。この数年で7〜8回は変更しましたね」(牧氏)
「新型コロナが流行しているタイミングでは、街に人が歩いていても入店率が低いため、政府が推奨する時間よりも早い午後5時ごろに閉店していました。22年12月現在は、店前通行者や入店率がコロナ前の水準に戻っているため、午後9時閉店としています」(長谷川氏)
この人流解析は、メニュー開発や店内のレイアウト設計にも役立てられている。
有楽町マイクロでは、多機能市場というサービス上、入店しても何も買わずに出ていく人がいる。過去の数値分析で入店しても飲食せずに退店する男性が多かったことから、男性が好みそうな唐揚げ丼を提供したところ、男性の飲食客が増加した事例があったという。
最近では、冬の到来に合わせてコタツ席を用意し、窓から見える場所に置いたところ、入店率が跳ね上がった。設置した日は過去最高の入店率になったほど反響がよかったそうだ。現在も窓から見える場所と店内奥の2カ所にコタツ席を設けている。
「当店は、さまざまなグッズやアートなどとコラボしています。入り口にそれらを置いたときに、入店率や入店者層がどう変わるのかという行動分析も参考になっていますね」(牧氏)
「私のように過去に店舗運営の経験がなくとも、明確に数字が出ることで新たな施策を考えやすいですし、実験的な提案でも説得力が増すことを感じています」(長谷川氏)
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