このように多くの場面でデータ分析が役立っている一方で、課題も見えているという。
「課題の一つはコストですね。アート作品や新商品の展示が多い当店では、本来なら店内の行動分析もやりたいところ。どんなアートがよく見られているか、どんな展示が効果的なのかの指針になると思います。
ただ、運営費用を踏まえると導入が難しいのが現状です。実証実験店舗として、できる限りの先進技術を取り入れていますが、実装を考えるとハードルの高さは否めません。当店の場合、レイアウトを定期的に変えているので、店内の行動分析がうまく機能するのかという懸念もあります」(牧氏)
現場を取り仕切る長谷川氏が感じているのは、省人化や効率化を実現するには、技術の精度に不安があることだ。同店で採用しているシステムは、原材料の発注予測も出せるのだが、現状は予測と実際の売り上げが一致しないことが多いという。
「発注予測は一つの目安にはなります。ただ、コロナ禍で社会情勢が変わりすぎている影響で、全面的に信用はできません。例えば、1年前の同時期の数字と比較しようにも、感染状況が違うので比較対象として機能しない。シェフの予測のほうが信頼度が高いのが現状です。
目指すのは、自動的に信頼できる売上予測が出て、食材の廃棄や人件費を最小限に抑えられる店舗運営です。23年以降も引き続き現状のデータ分析を続けながら、未来の飲食店のあるべき姿に近づけるよう取り組んでいきます」(長谷川氏)
AI画像分析の精度は年々上がっており、現状はマスクをしていても性別や年代の判定ができるまでになっている。有楽町マイクロのように、入り口にカメラを設置して店前通行量と入退店者のデータを取るだけでも、分かることは多くある。もう少し社会情勢が落ち着けば、狙いどおりの省人化・効率化につなげられるのかもしれない。
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