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人口1075人の村でも黒字を実現 セコマ会長が「過疎地への出店は福祉ではない」と語る理由後編(4/4 ページ)

» 2022年12月26日 08時00分 公開
[大村果歩ITmedia]
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福祉はダメ 地域と共に店を守り抜く

 丸谷会長は「とはいえ、福祉ではないのだから赤字はよくない。福祉の考え方はダメです」とキッパリ言う。

 「出店して、1年営業して閉店では意味がないんです。その地域でずっと店舗が存続することを考えなくてはいけません。覚悟を決めて出店する。そして、住民の方も一生懸命使ってくれる。セコマと、自治体と、住民が一体となり、店を守っていくことが大切です」(丸谷会長)

リアル店舗のあったかさ

 「こうして話していると分かってくるでしょう? 経営とか戦略なんかじゃなくて、企業の本質的な考え方。私たちは地域から恩恵を受けていますから、地域の役に立ちたい、ただそれだけなんです。地域に役立つ仕事をすれば、地域から何かが返ってくると思っています。それが小さいものであっても、売り上げや利益に結び付いていくのではないでしょうか? 『戦略的に過疎地に出店して、どうやっていくつもり?』などとよく聞かれますが、どうしてこの人は分からないのだろうなと思いますよ」(丸谷会長)

セコマ セコマのホットシェフ

 セコマの事業の本質である「地域の役に立つ」「地域のために」という考えが、北海道中の自治体を動かし、多くの買い物難民を救っているのだ。自治体や住民と協力し合って店舗を生み出し、育て、守っていくというのは、“地域密着”を体現するセコマだからできることだろう。

 「Webで物を買う時代になり、『リアル店舗はもう時代遅れだ』『コンビニもスーパーも、今後はアマゾンとの戦いだ』といわれています。しかし、それ以前に、自分たちがリアル店舗を本当に有効活用しているのか、本当にお客さまが必要とするものを置いているのかを考えるべきではないでしょうか? 一人一人のお客さまとの親密度を高めることができれば、客単価も通常の1.5倍まで行きつくのですから。

 今後も必要な場所に、必要な時期に、満を持して出店していこうと思います。人口が減っていく中でも売り上げが上がるということは、お客さまとのつながり、密接度が深くなっているということ。このつながりこそが、リアル店舗の良さであり、“あたたかみ”なのだと思います。顧客満足度、従業員の満足度、お客さんとのコミュニケーションを重要視しているからこそ、お店を愛する気持ちはどんどん醸成されていくと思っています」(丸谷会長)

セコマ リアル店舗の“あったかさ”を重視(画像はホットシェフの人気商品「フライドチキン」)
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