年金運用に暗雲? 22年上半期で5.4兆円の含み損 引き金となった28年ぶりの“事件”とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(4/4 ページ)

» 2022年12月30日 05時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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 債券は満期になれば、元本がそのまま償還される金融商品であるからだ。仮に債券価格が下落して含み損となったとしても、投資家が満期まで持ち続けることで元本は戻ってくる。従って、債券を債券金額より低い価額または高い価額で取得した場合は、期ごとに均等な額を貸借対照表に反映していくことになるのだ。

 一方で、途中売却の可能性もある債券については「時価」で評価されるため、この部分で評価損が大きくなる可能性はある。しかし、債券における評価損は「時価で評価した場合」のもので、この場合でも途中売却を行わずに保有を継続すれば、満期時に損失が埋め合わされることになる。

 このように考えると、債券については一時的に評価損が色濃く出てくることになるが、それは評価ベースの話であり、見た目よりは深刻な損失ではない。リスク要因があるとすれば、債券の高い利回りに対応しきれず、償還が滞ったり不能になったりするというデフォルトリスクだが、この点は分散投資によって対応されているリスクであるといえる。

 株式における損失も、有史以来で右肩上がりを継続しているという事実を踏まえると、長期運用であれば問題のない範囲の損失幅といえるだろう。長期的にはやはり、年金や大学基金といった投資家の資金は成長を続けていく可能性の方が高い。「大切な国民の年金をばくちで溶かした」などといった言説に惑わされないようにしたい。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


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