年金運用に暗雲? 22年上半期で5.4兆円の含み損 引き金となった28年ぶりの“事件”とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)

» 2022年12月30日 05時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 まずは大学基金のファンドだ。政府が大学基盤を整備するために22年3月から運用開始した「大学基金」は、22年の上半期だけで1881億円の評価損を計上した。計画上では年間3000億円ほどの運用益を計上し、政府による大学支援に充てる予定であったが、運用開始早々、目標利益と同じくらいのペースで損失を拡大する形となった。

 われわれの年金資金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、この半期で5.4兆円の評価損を計上している。下半期でさらに進んだ株安・債券安によってさらに損失額を拡大させている可能性があるため、第3から第4四半期の状況によっては、08年度の評価損9.3兆円、ないしは19年度の8.2兆円を超える損失が計上される可能性もある。

 通常、機関投資家は株式を5〜6割、債券を4〜5割程度保有するという分散投資を行っている。基本的には、株式が不調な際には債券の値上がりがカバーし、債券が値下がりする際には株式の値上がりでカバーするという、どちらの局面にも対応できるポートフォリオを組んでいる。

 しかし、22年はリーマンショック時にも起こらなかった「株と債券の同時値下がり」によって、株式相場の不調を債券がカバーできていない状況にある。これが、22年の運用パフォーマンスが不調となる可能性が高い根拠だ。

 では、なぜこのような株と債券の同時安が発生したのだろうか。

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