年金運用に暗雲? 22年上半期で5.4兆円の含み損 引き金となった28年ぶりの“事件”とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/4 ページ)

» 2022年12月30日 05時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 本日12月30日は、1年の相場を締めくくる「大納会」が東京証券取引所で執り行われる日で、いよいよ年の瀬という感がある。2022年は、振り返れば書ききれないほどの歴史的な出来事が、政治・経済のさまざまな場面で発生した年であるといえるだろう。

 米国では代表的な株式指数であるS&P500が年初来で-20%となったほか、21年に絶好調であったハイテク企業のナスダック指数が-34%となる展開となった。テスラやメタ・プラットフォームズのようなかつてのスター銘柄は、今年だけで何十兆円も時価総額を溶かし、安泰と思われていた世界トップ時価総額企業の顔ぶれもリアルタイムで激しく入れ替わっている。

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 一方で、そのような暴落相場は、日本人にとっては「実感なき」暴落相場ともいえるだろう。確かに、円安や金融緩和の継続によって国民の生活コストは大きく上昇した。しかし、TOPIX指数はこの1年でわずか4.50%しか下落しておらず、傷口は浅い。それだけでなく、米国株に投資している投資家の中にはドル高によって、円建てでみた運用リターンをプラスで終える者も少なくないだろう。

 一方、債券や株式をバランス良く投資する機関投資家にとって、22年はリーマン以来、「最悪」といっていい運用パフォーマンスとなりそうだ。機関投資家には年金や大学基金を運用するファンドも含まれており、年度末には「巨額損失」といった形で取り沙汰される可能性がある。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

年金など公的資金運用にも打撃

 なぜ、多くの個人投資家がやり過ごせたはずの22年がプロの機関投資家にとっては近年で最悪に近いパフォーマンスとなり得るのだろうか。そのカギは28年ぶりの「債券・株式の同時安」にある。まずは現象の説明より先に、年金や大学基金といった政府系のファンドが22年、どのような運用成績をたどっているのかをおさらしていきたい。

 なお、ここから挙げる例は、いずれも長期的視点で見れば問題のない運用方法であるということを念頭に置いた上で読んでほしい。

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