中国人観光客の入国が本格化する中、厚生労働省は1月11日までに、薬局やドラッグストアの業界団体に対し、各店舗で一般用解熱鎮痛薬の購入制限を課すよう要請した。新型コロナの症状緩和のため、大量購入する事例があり、医薬品の安定供給に支障が出ると判断した。
厚労省が各業界団体に購入制限を要請するとともに、店舗側が過剰な発注や備蓄目的での買占めもしないよう求めた。購入した医薬品を他者に販売する転売行為は法律に違反する恐れがあると店内で周知することも併せて求めた。
厚労省がこうした要請をする背景には、過去の苦い経験がある。コロナ禍初期のマスク不足だ。当時、コロナ禍でサプライチェーン(物流網)が停滞しており、日本国内で主に流通していた不織布マスクの多くが中国で生産されていたことで、輸入量が激減。フリマサイト「メルカリ」などでの転売目的でマスクの買い占めが相次ぎ、拍車をかけた。最終的に政府が介入し、マスクやアルコール消毒液などのフリマサイトでの販売を規制することとなった。
一方で、中国は自国の影響力を高めようと、国内の豊富なマスク在庫を使った「マスク外交」を展開し、批判も出た。最新のレポートでは、中国政府(共産党中央統一戦線工作部)指揮の下、世界5大陸、数十カ国に散らばる中国人組織が世界各国でマスクや防護服を買い占め、自国に送っていたと報じられている。
コロナ禍でサプライチェーンが混乱した背景から、経済産業省は国民生活に必要な重要物資の国内回帰を促すため、補助金を創設し、企業を支援。アイリスオーヤマやシャープなどが日本国内でマスク生産を開始し、マスク不足の解消に一役買った。2社の他、経産省の補助金で、マスク生産を手掛けるサンエムパッケージ(静岡県島田市)、アルコール消毒液の生産を手掛けるサラヤ(大阪市)は日本国内に生産拠点を構えた。
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)によると「外国人観光客が日本の医薬品を購入するケースはある」(同社広報)という。今後、薬局・ドラッグストア各店舗の対応に注目が集まりそうだ。
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