最近、SNSなどで差別的なネットミームが話題になっている。例えばその一つである“片親パン”は、「ひとり親家庭の子どもは、安価で栄養価が少なく、カロリーが高い菓子パンを親から与えられてきた」という偏見に基づく用語である。このような用語が広まる背景には、学校や地域社会で、「ひとり親家庭は社会的に不利な立場にある」という考えがいまだ根強いことが挙げられる。
他にも、一般的に賃料が安いとされる畳の部屋で動画配信を行う配信者を「和室界隈」と称したり、カードゲームやスマホゲームなどにそれほどお金がかけられない者を「アフガキ」(アフリカの子ども)と呼んだり、あってはならない偏見を基に「貧困」を笑う悪質かつ差別的なネットミームが足元で広がりを見せつつある。
一昔前の差別的なネットミームといえば、LGBTのような性的少数者や、ハンディキャップのある人など、「他人と違う」点を嘲笑する類のものが多かった。しかし、そうしたネットミームが広がるにつれて、差別・偏見が可視化・社会問題化し、少数者に対する認知・理解が広がることで、徐々に社会が変わってきたともいえる。
とするならば、“片親パン”や“和室界隈”といったネットミームも、今後、貧困や格差がより深刻な社会問題化するというシグナルを発していると見ることもできるのではないか。政府などが発表する統計は通常、数カ月前の情報が遅れて伝わってくるが、SNSの投稿は瞬時に情報が伝達されていく。「たかがネットミーム」と考えれば見落としてしまいがちだが、大企業の賃上げ・ボーナス増の一方で非正規雇用の拡大、実質賃金の低下といった格差が今後より深刻化していくと、われわれに警鐘を鳴らしているのかもしれない。
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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