厚生労働省が6日に発表した毎月勤労統計調査によれば、22年11月の実質賃金は8年ぶりとなる下落率を示し、前年同月比で3.8%のマイナスとなった。総務省が発表している消費者物価指数を見ると、22年12月分が前年同月比で4.0%(東京23区)の上昇であることから、多くの企業が物価上昇に追い付けるだけの賃上げを現状行えていないのが現状だ。
その一方で、格差を感じさせるニュースもあった、経済団体連合会が年末に発表した22年冬ボーナスの妥結結果によると、その平均額は前年比8.92%増の89万4179円だった。現在の集計方法になった1981年以降で最大の伸び幅だといい、物価上昇と賃金が上がらないという二重苦にあえぐ人が多い中、異例のニュースといえなくもない。
日本で実質賃金が下がっている要因には、さまざまな理由がある。一つは、高齢化が進むことで、労働力が減少し、労働市場が収縮していることが挙げられる。また、このような労働力の減少によって、ロボットやAIといったテクノロジーがヒトに代わって労働力を担うことで、労働市場の競争が激しくなっていることも影響しているだろう。
他にも、足元でささやかれている消費税の引き上げは消費者の購買意欲を減退させ、売り上げの面で業績を圧迫する可能性もある。こうした将来のリスクや不確実性が、賃上げを阻んでいるといえる。
こうした状況下で、正社員の賃金を上げるために終身雇用や正規雇用を実質的に後退させることは、合理的な経営意思決定であるといえるだろう。終身雇用制度は、正社員に対して長期的な安定的な職場を提供する利点があるものの、企業にとっては人件費のコントロールが難しくなるデメリットがある。
解雇や雇い止めが流動的になれば、より柔軟に賃上げがなされることとなる。しかし、これは「実力」や「自己責任」の名の下に既に始まっている格差社会や貧困問題をより深刻化させるリスクと隣り合わせだ。
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