16年にDAZNがスポーツ中継サービスを始めた頃は、おおむね肯定的な反応が多かった。グローバルで人気の高いスポーツの放映権を獲得し、世界中で開催されているさまざまな試合を観戦できたからだ。
特に日本ではサッカーJリーグとの結び付きが強い。
DAZNが17年にJリーグの放映権を10年2100億円で契約獲得したことで、Jリーグはそれまでの4倍にのぼる放映権料を10年間確保した。
この分配金でチームは有力選手を獲得できるようになり、アジア諸国での配信サービス充実で日本国外のファンも獲得した。海外有力選手が日本でプレーするようになり、これもDAZN効果と喜んだ人も少なくないだろう。
その後、20年にコロナ禍に入ると試合が行えない状況に陥り、2年の契約延長と契約金額見直しが行われたが、年間予算という意味では大きな違いはない。リーグ全体でDAZNへの収益依存度が高い状況に変わらない。
DAZNはグローバル企業であるため、必ずしも日本目線だけで語れるわけではない。
しかし、サッカーファンにとってDAZNが必要不可欠な存在であることは間違いない。象徴的な出来事は、1925円だったDAZNの月額料金が22年2月以降、3000円へと大幅値上げされたにもかかわらず「契約者数はほとんど変化しなかった」(DAZN Japan Executive Vice Presidentの山田学氏)ことだ。
提供するコンテンツの質は下がったにもかかわらず、契約者数が減っていないのだから、顧客獲得のために投資する時期は終わったと判断したのだろう。安定して良質のコンテンツを届け続けるには収益確保も重要であるため、これからは収益性を重視するとしても不思議ではない。
要約するなら、「競争相手がいない状況にまでビジネス環境が進んだ」ため、これからは収益を重視した舵(かじ)取りを行うということだ。そしてDAZNが市場環境を精査した結果、適切と判断した価格が3780円ということだ。
しかし、放映権(実際には配信権)が高騰しているとはいえ、少々、引っ掛かる思いがあるサッカーファンは少なくないと思う。ちなみにDAZNは円安による影響については、一切言及していない。
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