「そろそろ寝ようかな〜〜」 ペットとLINEで会話した結果、どんなことが分かったのか?NECが開発(2/2 ページ)

» 2023年02月02日 08時00分 公開
[熊谷紗希ITmedia]
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体験してみた感想は?

 実際に体験した編集部員は「装着前は『寝ています』『走っています』のような分かりやすい返答を想像していた。しかし実際は『ぴっとりぴっとり』『家活三昧』など、フレーズから何となく状況が分かるものが多かった。中には『ファッッ!?』『すか』のように意味を汲み取りづらく、何を考えているかよく分からないものもあった。気まぐれな猫らしさが出ていると思う」と振り返る。

 NECのAI・アナリティクス事業部環境分析事業推進室シニアエキスパートの福田健二氏は、「メッセージはペットのジャンプや伸び縮みといった上下運動や歩行スピードなどのデータを元に生成している」と話す。1月現在、メッセージのパターンは3500に上る。動物園のふれあいコーナーの動物たちに2週間ほどセンサーを装着しデータを収集したり、オノマトペ専門家に動きと合致するオノマトペをヒアリングしたりと、できるだけペットのリアルな状態を届けられるよう工夫した。

 waneco talk開発の経緯について福田氏は、「ペットの留守番中の様子が気になるという飼い主が多いことが分かりました」と話す。ペットカメラなどもあるが、一部屋しか映せなかったり、部屋の中が見えてしまったりするなど利便性やプライバシーの課題があるという。

外出中のペットの様子が気になる飼い主が多い(画像:NEC提供)

 waneco talkであれば部屋の中が映ることもなく、「何している?」と問いかけるだけで現在のペットの状況が分かる。もちろん、設定次第では問いかけなくても積極的にメッセージを送ってくれる。会話というエンターテインメント要素を盛り込み、緩く楽しく見守れるようにした。

うにまる、朝5時にハイテンション ここから分かることは?

 waneco talkの強みはペットと会話できることだけにとどまらない。メッセージ生成のために取得している活動データも重要なポイントだ。活動データの可視化によって、健康状態が分かったり、医療機関との連携もしやすくなったりするという。うにまるの活動データを例に活用イメージを紹介しよう。

 とある日の早朝5時、うにまるの活動量が大幅に増えていた。編集部員は「何となく朝方騒がしかったが、自分は二度寝したのでうっすらとしか覚えていない」と振り返る。

うにまるが早朝5時に動き回っていることが分かる

 活動データを福田氏に見せたところ、ジャンプしていた可能性が高いと教えてくれた。これまでの分析を踏まえると、ジャンプの回数と健康レベルは比例する傾向にあるとも話す。

 「猫は、ジャンプの回数など縦の動きが減ってくると足に問題がある可能性も少なくありません。飼い主が日頃からしっかり観察していて、ジャンプが減ってきたなと分かればいいのですが、分からないと具合が悪くなってから動物病院に行って、複数の検査をする必要も出てきます」(福田氏)

 活動データを通じて「ジャンプなど縦の動きが減ってきた」と分かっていれば、どこかに問題があると早期に気付けるかもしれない。予防の段階で受診できるため症状の悪化も防げる。もちろん、治療後の経過観察にも効果的だ。

 「皮膚病を患っているペットがいるとします。夜に活動していれば、体がかゆくて起きてしまっていると分かります。一方、活動量が少なければ眠っているので処方された薬が効いていると分かります」(福田氏)

 病気にかかってしまったペットを心配する気持ちは分かるが、飼い主が四六時中状態を監視するのも現実的ではない。活動データを見て、夜の間の動きが推測できるだけでも安心感は増すだろう。前月と比較して活動量が減っている場合にはアプリからアラートが発出される仕組みになっている。

活動データを記録してアラートを出す(画像:NEC提供)

 ペットは人間のように細かに自分の症状を伝えることができない。飼い主が代弁する必要があるわけだが、誤った情報を伝えてしまう可能性も捨てきれない。活動データであれば、主観や勘違いが入り込む余地は少なく、より適切な診療や治療につながるだろう。

 「15年一緒に過ごしていたペットが亡くなりました。たまに吐いたり、一日中寝ていたりといった予兆はあったものの、年かなと思うだけでした。飼い主が気付いてあげないといけない、というのがこのサービスを運営していく原動力になっています」(福田氏)

 福田氏と同様の思いをしている飼い主も多いようだ。クラウドファンディング「Makuake」での応援購入総額は目標金額の24倍となる2400万円超を記録した。現在の利用者は2200人に上る。2023年には4000台の販売を見込んでいるという。

 先述した通り、ペット市場は今後も右肩上がりの成長が予想される。市場の拡大に伴い、参入するプレーヤーや競合も増えるだろう。そこで他社とどのように差別化を図っていくのか。会話がきちんと成立する「マジなおしゃべりモード」など、突飛でワクワクするアップデートを期待したい。

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