格闘技イベント「NARIAGARI」が無料配信 皇治とスマートニュース事業責任者に真意を聞いた23年もブームは続くか(5/5 ページ)

» 2023年02月02日 05時00分 公開
[武田信晃ITmedia]
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一歩踏み出す勇気

 皇治は自己プロデュースに長けている印象が強い。気を付けていることは何かを聞いてみた。

 「言われた本人は腹が立つけど、周りは笑ってしまうような感じですかね。差別用語とかいじめにならないようにすることは気をつけています。あとは勇気ですよね。俺なんか、試合で何回も負けても、こうしてインタビューを受けられているのは、勇気をもって一歩踏み出して行動したからです。誰もが挑戦しないことを1人でやるのは、自分も人間なので怖いです。だけど、勇気を持っていけば何かが変わると思ってやってきました。

 K-1からRIZINに行ったときもそうやし、RIZINで勝てなくて、もう無理かなと感じたこともいっぱいありました。続ける勇気があったからこうなれたと思います。成り上がりたい人はどんどん勇気を持ってね、一歩踏み出してくれれば、何かいい形になるんじゃないかな」

 選手としてではなく、興行主として事業を起こすことにためらいはなかったのかも聞いてみた。

 「いや、やっぱり恐怖ですよ。今回、NARIAGARIという団体を作ることで、マイナスの意見もいっぱいありますし。ただ、『自分が勇気を持って一歩踏み出してやってきたことが、初めて実を結びかけているな』って初めて思ったんです。埋もれている格闘家をピックアップすることについて自分が協力できるのは、格闘技をやってきてよかったなって思いました」

 23年も格闘技ブームが続くのだろうか。皇治は業界への危機感も感じていた。

 「続けないといけないですよね。俺はずっと言っているのですが、立ち技で魔裟斗さんが引退してから天心、武尊、自分の世代に来るのに10年かかりました。THE MATCH 2022は武尊と天心の試合だけでよかったのに、ほとんどのトップ選手の試合を組んでしまったんです。そうではなくて、他の試合は名前のない選手にやらせてよかったんです。有名な選手を全部使ってしまいましたから次からはもうマンネリですよ。

 正直、もう僕らは『終わった世代』なんです。このまま待ちぼうけしたら、次のスターが出てくるまであと10年かかります。だからこそ、次のスターが出るまでは、頑張らないといけないんです」

 副業をしないと食べていけないプロ格闘家が多い現状は、周知の通りだ。ただ、業界の構造上、ファイトマネーの拡大は難しいので、個別にスポンサーをつけることによって稼げる業界にするというのが皇治の主張だ。その発想は、筆者も考えつかなかった。確かに多くのスポーツにおいて、年俸、ファイトマネー、賞金といったものよりもスポンサー収入の方が多いことが少なくない。

 格闘技業界の構造を変えるのは簡単ではない。だが選手の実力さえあれば、スポンサーを獲得するのはそこまで難しくはない。NARIAGARIの創設は、苦労して成り上がってきた皇治の体験に基づく事業なだけに、課題に対して現実的な解を示したものと言えるだろう。

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