「コロナ融資」を受けた企業の倒産が2.3倍に なぜ?累計損失総額は推計約334億超に

» 2023年02月06日 10時39分 公開
[ほしのあずさITmedia]

 帝国データバンクは、全国55兆円に上る実質無利子・無担保融資の「コロナ融資(通称:ゼロゼロ融資)」について、手厚い支援の副作用として、返済能力を大幅に超過した債務を抱える企業を大量に生み出す「過剰債務」問題が顕在化していると警鐘を鳴らした。

 2022年8月に同社が実施した調査では、コロナ融資を受けた企業のうち「23年以降」に返済を迎える企業が約3割を占めており、長引くコロナ禍で業績回復が遅れている中小・零細企業の「あきらめ」による倒産増が懸念される。

コロナ融資 「コロナ融資」を受けた企業の倒産が増加している(画像はイメージ)

 「コロナ融資」を受けた後に倒産した企業の数は21年が167件、22年が384件と前年の2.3倍に上っている。累計損失総額は推計約334億9588万円となり、国民1人あたり約280円の負担が発生している計算となる。

 実際の融資額が判明した約180社における1社あたりのコロナ融資借入額平均は、約5900万円だった。当初は政府系金融機関からの借り入れが中心だったものの、22年以降は銀行や信用金庫など民間金融機関から借り入れた企業の倒産が目立った。

 多くの中小企業はコロナ禍による経済、経営の縮小や環境の変化により業績が悪化したが、持続化給付金をはじめとする政府の支援策に加え「コロナ融資」で資金繰りを下支えしてきた。

 しかしこの間に業績の立て直しが進まず、融資を使い切っている中小企業は多い。23年3月には、利払いを含めた本格的な返済開始を迎えることもあり、返済原資の確保や金融機関からの追加融資が難しい企業を中心に、事業継続をあきらめる倒産が相次いでいる。

コロナ融資 「コロナ融資後倒産」年別発生件数(帝国データバンク調べ 以下同)

 倒産企業を業種別に見ると、22年最も多かったのは「建設業」(85件・22%)で前年の3倍に上った。次いで「卸売業」(76件・20%)、「製造業」(65件・17%)が続いた。「製造・卸売」では食品に関した業種が、「卸売業」では需要減少が続くアパレル産業の増加が目立った。

コロナ融資 業種別件数「コロナ融資後倒産」(2022年)

 「コロナ融資」の返済開始時期について、70.4%の企業が「22年12月末までに返済開始」しているが、そのほか「23年6月末まで」が13.7%、「23年12月末まで」が7.9%、「24年1月以降」が6.2%と「23年以降」に返済開始予定の企業が27.8%を占める。同社は、収益力が戻らず返済原資の確保ができない企業の倒産増加が懸念されるとコメントしている。

コロナ融資 「コロナ融資」の返済開始時期

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