値上げで話題の「ゼルダ」新作 ゲーム業界が参考にすべき「100億の男」とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)

» 2023年02月17日 05時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 任天堂が5月に発売予定であるゼルダの伝説シリーズの新作、「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の北米市場における価格が“型破り”として話題になっている。

出所:任天堂公式Webサイトからキャプチャー

 同作品の北米市場における価格は69.99ドル(約9368円)と、従来の60ドル帯から頭一つ抜けて70ドルに限りなく近い価格帯での販売となった。今回の値付けは、北米ゲーマーにとっても、日本のゲーマーにとっても大きな意味合いを持つ。なぜなら、北米市場においては、一般的に「60ドルあればゲームソフトを買える」という相場感覚が消費者の間で定着しており、Nintendo Switchを含めて、ゲームソフトの定価が60ドル台を超えることが少なかったからだ。

 日本のゲーマーにとっても大きな意味合いを持つ理由は、同ゲームの日本語版が北米版よりも安く入手可能な点だろう。同ソフトにおける国内向けの小売希望価格は税込7900円(ダウンロード版)。北米ユーザーと比較して1400円ほど割安にゼルダの新作を購入できることになりそうだ。

 実は従来、日本語版のゲームソフトの方が、北米市場よりも単価が高いという「価格のねじれ」が発生するケースが多かった。こうした海外版より高値でゲームが販売される現象は、一部ゲームファンの間で「おま値(お前の国には高値で売る)」と呼ばれている。自国のゲーム会社が海外よりも日本で割高に販売する点を、愛を込めて皮肉る定番ネタとなっていたのだ。しかし足元では、北米における急激なインフレと円安によって、“おま値”現象も減ってきているようだ。

過去には「5けた」のソフトもあった

 とはいえ、ゼルダ新作の国内定価7900円は、大型タイトルでも6500円程度で推移していた他のNintendo Switchソフトと比較してやはり頭一つ抜けるレベルの値上げだった。

 任天堂が出すゲームソフトの価格相場といえば、ここ20年ほどは携帯型で5000円程度、据え置き機では6000円程度の価格帯で購入できるイメージを持っている読者も少なくないだろう。

 時代をさかのぼれば、ファミリーコンピュータなど、バブル時代に発売されたゲームのカセットは現在の相場よりも高く、8000円程度であった。また、この時代のゲームカセットは「1本で1万円」といった5けたの大台を超えるタイトルも決して珍しくはなかった。

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