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働かないおじさんを“一掃”すると、若者が犠牲になる──なぜ?(1/3 ページ)

» 2023年02月21日 11時30分 公開
[神田靖美ITmedia]

 「働かないおじさん」という言葉は、今やメディアで見ない日はないほど流行のコンテンツになっています。その語が指すところには論者によってブレがありますが、おおむね「十分とは言えない働きなのに分不相応な給与を受け取っている、一部の中高年層」といったところでしょう。

 「働かないおじさん」について議論されるようになって久しいですが、なかなか改革が進まないのはなぜでしょうか。日本型雇用慣行における2つの理由があります。

「新卒一括採用」にメスを入れなければならない

photo 画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 日本の独特の雇用慣行の一つに新卒一括採用があります。在学中に採用選考を実施し、内定者を卒業後直ちに雇用することです。プロ野球のドラフト会議のように、現有戦力が足りていようといまいと関係なく新人を入れます。

 多くの国々では、採用は基本的に欠員補充であり、職業経験がない学生をわざわざ採用しようとはしません。米国の場合は、新卒者でも就業経験なしでは雇用されません。このため学生は在学中にインターンとして働きます。

 インターンにも採用選考があり、無給でありながら、卒業後に雇用してもらえるという保証はありません。その職種と関連が強い学部や学科を卒業していることも要求されます。例えば文学専攻の学生が銀行に就職するようなことは困難です。

 対して日本では、通常はインターン経験も出身学部も不問です。入社後は見習い期間中も給料を払ってくれます。

 育成期間は企業側にとって、本来は賃金を払うのではなく、授業料をもらわなければ割に合いません。このときの「貸し」を30歳代から40歳代のときに賃金以上の貢献を要求することによって回収します。

 しかし社員側からみれば、職業人生の前半は貢献度以上の賃金をもらい、後半は貢献度未満の賃金しかもらえないというのでは、後半は苦痛でしかありません。そうならないように、職業人生の最終盤に再び貢献度以上の賃金をもらえる時期を設けます。このような仕組みを「長期決済型賃金」といます。従って定年間近の人が貢献度以上の賃金をもらえることには経済的な合理性があります。

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