東京都が主導する国際的なスタートアップイベント「City-Tech. Tokyo(シティテック東京)」が東京国際フォーラム(東京・有楽町)で2月27〜28日に開催された。このイベントは世界中からスタートアップを集め、持続可能な社会に向けイノベーションが生まれる都市として東京都をアピールしていこうという試みだ。
第1回目となる今回は、世界41カ国からインフラ・社会基盤、環境、生活、文化など、多様なアイデアとテクノロジーをもつスタートアップ328社が集結した。本記事では、イベント参加企業の中からサステナブルで人に優しい食を叶えるユニークな「フードテック」企業を紹介する。
持ち帰り用弁当など調理済み食品を入れる容器は、プラスチック製のものが多く、一度使われたらゴミとして捨てられる運命にある。脱プラスチックや資源の有効活用を重視する消費者や企業にとって、環境に優しい素材は再生紙や再生プラスチックくらいしか選択肢がなかった。しかもこれらのエコ素材は水分に弱く、高温に耐えられないという弱点があった。
そうした中、新たな選択肢として登場したのがシンガポールでリサイクル食品容器を作るスタートアップalterpacksである。同社の食品容器は、ビール工場などから排出される麦芽や大麦などの廃棄物から作られていて、見た目や手触りは再生紙を使った食品容器に近い。一見すると普通の弁当用容器だが、その耐久性の高さには目を見張る。熱や水分に強く、熱いスープなどを入れても濡れたり、変形したりする心配がない。
同社COOのSteven Tan氏によると、耐熱温度はマイナス18℃から最高260℃まであるという。冷凍庫に保存しておけるだけでなく、電子レンジ、対流式オーブンやガスコンロの直火にも使えると話す。少し信じ難いが、Tan氏が実際にガスコンロで容器を温めている録画映像を公開し、会場に驚きを生んでいた。
最近は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、テークアウト需要が増えている。自宅で介護サービスを受けながら、宅配弁当を取る高齢者も少なくないだろう。「水、熱に強いalterpacksなら一度、弁当を冷凍庫に保存しておき、数日後に電子レンジや火にかけて食べるということも可能です」とTan氏は提案した。
現在、alterpacksはシンガポールのほか、インドネシア、オーストラリアで展開していて、4種類の容器をそろえる。米国食品医薬品局(FDA)やシンガポール食品公社(SFA)から、食品に直に触れられる容器として認可も受けている。日本の容器包装市場における環境対応素材は、現在はそのほとんどが再生紙だが、今後alterpacksのような穀物由来の素材も増えてくるかもしれない。
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