コラム
» 2023年03月09日 10時01分 公開

「スマホ依存症」への警鐘はあまり意味がない、なるほどの理由世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)

[山田敏弘ITmedia]

世界で2億人が「SNS中毒」だが……

 スマホを含むデジタル機器依存症は、世界規模での問題として語られることが少なくない。スマホだけを見ても、2023年には世界人口の78億人のうち、68億人が所有することになると予測されている。人類の多くが、スマホをはじめとするデジタル機器と暮らしている。

世界規模で見たスマホ所有者数の予測(画像:statista「Number of smartphone subscriptions worldwide from 2016 to 2021, with forecasts from 2022 to 2027」)

 海外でも、デジタル機器への依存症が話題になっている。世界的な統計によると、2億人ほどがSNSの「中毒」になっていると言われている。

 そのほか22年の統計によると、米国では人々が1日に平均344回もスマホをチェックしていると分かった。これは4分に1回スマホに触れているという計算になる。英国では18〜 30歳の約4割がスマホ依存になっているとの調査結果もある。フランス政府はスマホ依存について啓蒙するキャンペーンを実施するなど、対策に乗り出している。

米国人のスマホ利用と使用項目について(画像:REVIEWS.org「2022 Cell Phone Usage Statistics: How Obsessed Are We?」)

 確かに、常にデジタル機器に囲まれ、特にスマホから片時も目を離せないとなると、「中毒」のようなものに思えるかもしれない。しかしながら、テレビが広く普及された1970年代には、やはりテレビから目が離せない「テレビ中毒」という言葉が出現し、その後にはテレビゲームなどにハマる「ゲーム中毒」も社会問題になった。

 90年代には、「インターネット依存」からオンラインゲームなどに熱中しすぎてしまう「ゲーム依存」も指摘された。実際、日本の依存症対策全国センターは「ゲーム依存症の医学病名は『ゲーム障害』と言います。本人や周囲が『ゲームにハマっているだけ』と気軽に考えているうちに進行してしまうのがゲーム障害という病気です」と定義しており、警鐘を鳴らしている。

 ただし、こう振り返ってみると現在のスマホ中毒というのも、これまであった新しい技術に「ハマる」という意味では大差はないように思える。人々を夢中にさせるテクノロジーの登場とそれに依存する傾向はこれまでも繰り返されてきた現象に過ぎない。

 そして昔テレビ依存、ゲーム依存と指摘された人も、今では普通に暮らしていると思われる。筆者の知る限り、そうした依存のせいでなんらかの障害を負ってしまい大変な生活を強いられているという話はあまり聞いたことがない。

 過去には、「ゲーム脳」なんて言葉ももてはやされた。これは、2002年に脳神経科学を専門とする日本大学大学院の森昭雄教授が「ゲームは危険」と主張したことに端を発する。大阪大学の調査では、森教授の主張には一部誤りが含まれていると指摘されており、もちろんゲームを全て肯定的に捉えるのは危険だが、証拠不十分な主張と位置付けられている。

 さらにゲームは家庭での娯楽という枠を飛び出し、今では「eスポーツ」という立派な競技として地位や人気を確立している。21年には世界の市場規模が10億ドルに到達した。昨今、「ゲーム脳」という言葉を耳にすることは少なくなり、競技としての可能性が語られるようになっている。

今やゲームは「eスポーツ」という競技として地位を確立している(画像:ゲッティイメージズより)

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