今後、スマホのようなデジタル機器が増えることはあっても減ることはないだろう。筆者は最近、取材で米国に訪れたのだが、生活がかなり「デジタル化」しているのを感じた。
空港ではスマホでチケットをスキャンして搭乗し、日用品店の支払いやファストフード店でのオーダーなどはタッチパネルを使用し、カードで支払った。駐車場などもバーコードで支払いを済ませるシステムが多く、購入した洋服の領収書はスマホに届いた。
そんなデジタル化が加速している時代において、一時的な「デジタルデトックス」なんていうのはあまり意味がないように思えてならない。結局、スマホがなければ生活が成り立たたないという事実に向き合うことになる。
とは言いつつも、先の統計にもある通り、特にスマホについてはいっときも手放せなくなっていると感じる人がいるのも事実である。スマホ中毒によってどういった弊害が出るのかは分からないが(ハマりすぎて寝不足になる、というのはゲームなどの方が顕著だと思われる)、仕事や勉強中に集中力が切れてしまうというのは確かにあるだろう。街中では、歩きスマホによるトラブルも散見される。
もちろん、デジタル化が加速した社会の中でも意識的にスマホ使用を遠ざける工夫もできなくはない。実際に「デトックス」できるスマホアプリなども登場している(スマホでデジタルデトックスをするのは皮肉ではあるが……)。
強制的にスマホの使用を制限し、一定期間SNSやゲームなどをできなくする時間管理アプリ「Flipd」や、スマホの使用時間や頻度などを決めて管理できる「AppDetox」というアプリがある。使用時間などのルールを破るとアプリをブロックする仕様だ。
SNSなどの通知を停止したり、定期的にまとめて通知されたりするような工夫があれば、頻繁にデジタル機器をチェックすることはなくなるかもしれない。そうすれば、仕事や勉強に集中できるため、デジタル社会の負の側面から自分を守ることができる。
スマホをよく使うために精神がおかしくなったという話は聞いたことはないものの、頻繁にスマホをチェックするせいで心の乱れを感じているとしたら、冒頭のような寺院でデトックスするのも一案ではある。
ただ繰り返しになるが、スマホをチェックする習慣ももはや人類の生活の一部になりつつあり、当たり前すぎてストレスに感じなくなっていく可能性が高い。事実、スマホなどがなければ便利に生活できない世界に私たちは暮らしているのだから、うまく付き合っていくより他ないのである。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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