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「獺祭」蔵元が賃金と生産性をアップできたワケ 「賃上げブーム」との決定的な違いとは河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

» 2023年03月10日 10時00分 公開
[河合薫ITmedia]

中央値が激減! 日本の賃金は下がっていた

 そもそも日本は賃金が低すぎました。

 ご承知の通り、バブル崩壊以後、日本は先進国で唯一賃金が上がらなかった国であり、経済協力開発機構(OECD)加盟国の2020年の年間平均賃金水準で見ると、日本は35カ国中22位。最下位グループです。

 しかも、実際には「上がらない」どころか「下がってた」ことが内閣府の分析で明かされています。

 ご覧の通りバブル崩壊後の1994年から2019年までの25年間で、年収の中央値は550万円から372万円へと著しく減少しています。

25年間で年収の中央値が、550万円から372万円へ(内閣府Webサイトより

 年齢別では、“働き盛り”である30代後半〜50代前半までの世帯の年収が激減していました。最も減少幅が大きかった45〜54歳では、1994年の826万円から、195万円も下がっていたのです。

年収中央値の変化(1994→2019年)

25〜34歳:470万→429万円(▲41万円)
35〜44歳:657万→565万円(▲92万円)
45〜54歳:826万→631万円(▲195万円)
55〜64歳:560万→532万円(▲28万円)
65歳以上: 50万→38万円(▲12万円)

 しかも、氷河期世代を含む「35〜44歳の単身世帯」の所得のボリュームゾーンは、94年の500万円台から300万円台へと、200万円ほども減少していました。

 こういった状況を鑑みれば、賃上げして当たり前だし、コロナ禍で欧米諸国が大幅な賃上げに踏み切ったわけですから、世界基準には程遠いといわざるを得ません。物価上昇率からみれば、実質賃金は大幅に目減りすることになるとの指摘もあります。

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