問題はそれだけではありません。
どんなに「賃金アップします!」と豪語する企業が増えようとも、40歳以上が上がる見込みは、ほぼありません。
なにせ、企業は20代の有能人材には“高い賃金”を払う気満々ですが、“その他”には目もくれません。20〜30代前半の賃金アップは「良い人材に我が社を選んでもらうため」のアピールになりますが、40歳以上の賃金の高さは“昭和”をイメージさせるネガティブ要因でしかないのです。
実際、経団連の「2021年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」で、賃上げを実施する企業に具体的な配分方法について聞いたところ、「若年層(30歳程度まで)へ重点配分」が18.7%だったのに対し、「ベテラン層(45歳程度以上)へ重点配分」はわずか2.2%です。
本来「働くの人の賃金を上げる」という経営判断を実現するには、「経営とは人の可能性を信じること」という当たり前と、人に投資し続けるにはイノベーションが必要不可欠という「経営の基本」の実践が不可欠です。なのに、それがない。
「いい人材を他の企業にとられないように〜」とか、「あそこもあげたからうちの会社も〜」といった、その場しのぎの賃上げは持続しないし、生産性も向上しません。ベテラン社員の「希望退職」を拡大させるだけです。
今からちょうど一年前に、日本酒「獺祭」蔵元の旭酒造が、大卒新入社員の初任給を、従来の月額21万円程度から30万円に引き上げると発表したニュースを覚えていますでしょうか(22年・23年製造部入社社員が対象)。
同社では22年に「5年で平均基本給を2倍」にすることを目標に掲げ、26年度には製造部の給与を、21年度比で2倍以上にすることを目指すプロジェクトをスタート。つまり、新卒社員の初任給アップだけではなく、既存社員の賃金も26年まで、段階的にベースアップを実施する計画なのです。
この「うらやましすぎる賃上げ」を実現させたのが、まさに「経営の基本」。旭酒造の前社長である桜井博志会長の「酒造りへの熱い思い」です。
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