「ヤン坊マー坊の歌」のヤンマーが、ブランド訴求のために建てた「新社屋」の仕掛け根底に創業時の理念(2/3 ページ)

» 2023年03月24日 20時46分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

ANAグループも出店 全国の名産品を特集

 ヤンマー東京は地下3階地上14階の複合施設で、地下1階から地上2階が誰でも入れる共有スペースとなっている。どれも「米」というコンセプトで統一されており、1階には米の生育や米づくりの知恵・未来について触れられる無料の体験型コンテンツ「ヤンマー米ギャラリー」がある。

photo ヤンマー米ギャラリー

 2階は「YANMAR MARCHE TOKYO(ヤンマーマルシェトーキョー)」という複合店舗となっており、お米と楽しむイタリアンレストラン「ASTERISCO(アステリスコ)」や、ANAグループのANA X株式会社が企画・運営。日本全国の名産品を期間ごとに特集し、地域の魅力と出会えることをうたう「TOCHI-DOCHI(トチドチ)」といった店舗が入っている。

photo ANAグループのANA X株式会社が企画・運営する「TOCHI-DOCHI(トチドチ)」。日本全国の名産品を期間ごとに特集し、地域の魅力と出会えることをうたう

 地下1階は大部分が「HANASAKA SQUARE(ハナサカ スクエア)」という休憩スペースになっている他、お米にこだわったテークアウト専門の海苔弁当店「海苔弁八重八」がある。

 1階の外周部分には、日本中のこだわり農家から米を集め、自分に合ったお米を見つけられる「KOME-SHIN(米心)」や、日本酒アイスクリーム専門店「SAKEICE Tokyo Shop(サケアイストーキョーショップ)」も入居している。「SAKEICE Tokyo Shop」では、日本各地の日本酒を用いて作られたアイスクリームを販売している。

photo 「SAKEICE Tokyo Shop」では、日本酒で作られたアイスクリームを販売

 このように全て「米」というコンセプトで徹底しているのが特徴だ。なぜ、「米」にこだわったのか、ヤンマーホールディングスのブランディングを統括する、取締役ブランド部長(CBO)の長屋明浩さんはこう話す。

 「大阪の新本社ビルは『自然との共生』をコンセプトに、環境軸を打ち出して設計されました。ヤンマー東京ではこの環境軸を前提に、さらに踏み込んで『人』にフォーカスしました。そして『人』が生きる上で欠かせないものとして『食』があります。農業は弊社事業の柱ですから、食生産の軸である『米』をテーマにしたわけです。このテーマをベースに、弊社創業時からの理念である『HANASAKA(ハナサカ)』と交わり、それを体現するような空間となりました」

 「ハナサカ」とは、ヤンマーが1912年の創業から受け継いでいる価値観だ。創業者の山岡孫吉が日ごろ大切にしていた「人を豊かにしたい」という思いや、「美しき世界は感謝の心から」という座右の銘もこの考え方につながっている。

 この言葉はヤンマーグループの隅々にも現れている。代表的なものとしては、大阪を本拠地とし、ヤンマーホールディングスの前身企業であるヤンマーディーゼルサッカー部が元となったプロサッカーチーム「セレッソ大阪」のチーム名にも表されている。

 「セレッソ」はスペイン語で「桜」を意味し、より直接的には、セレッソ大阪の育成サポートクラブには「ハナサカクラブ」という名称が使われている。

photo ヤンマーホールディングス取締役ブランド部長(CBO)の長屋明浩さん

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.