大浴場の湯を年に2回しか入れ換えていなかった福岡県筑紫野市の老舗旅館「大丸別荘」の元社長が遺体で見つかった。近くには遺書のようなメモがあったことから、自殺だと見られている。
まずはこの場を借りて、近親者の皆さんにお悔やみを申し上げたい。
自殺防止の観点から、本来このような話題を扱うことがあまりよろしくないことはよく分かっている。しかし、今回はあえて故人の発言などを振り返らせていただく。元社長のような人をこれ以上増やさないため、あることを提言したいからだ。
それは「謝罪会見トレーニング」の重要性である。筆者はこれまで報道対策アドバイザーとして、さまざまな企業不祥事に関わってきたが、そこで今回亡くなった元社長のように世間から猛烈なバッシングを受けて、心身が追いつめられる経営トップを嫌というほど目にしてきた。そのうち、そういう人々がみな同じようなキャラクターであることに気付いた。
それは一言で言ってしまうと「謝罪会見というのは、自分の思っていることを素直にしゃべる場所だと勘違いしている経営トップ」である。
残念ながら、このような経営トップによる謝罪会見というのは、事態を収束させることなく、悪化させてしまうケースが多々あるのだ。
自分の考えを相手に押し付けず、抑制的にしゃべれる経営トップの謝罪会見というのは、ボロカスに叩かれても3日ほどで世間は忘れていく。ネットやSNSが普及したことで、この手の不祥事系ニュースの消費スピードは格段に上がっているからだ。
だが、経営トップが自分の思っていることを素直にしゃべる謝罪会見の場合、そうはいかない。組織の論理に長年毒された人が好き勝手にしゃべると、見苦しい言い訳や、世間ズレした感覚を披露するだけにしかならない。それをマスコミが切り取って大騒ぎするので、人々は「社会正義のためにみんなでボロカスに叩いても追いつめていい人間」という認識を抱く。
つまり、バッシングを1週間、2週間と長期化させるだけではなく、経営トップ個人への誹謗中傷にまで発展してしまうのだ。
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