なぜ「さつまいもブーム」が起きているのか 背景に“エリートの皮算用”スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2023年03月22日 09時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

飢える人を少しでも減らす

 という話をすると、「今はグローバルサプライチェーンで世界のモノとカネはすべてつながっているのを知らないのか」と国際派知識人が難癖をつけるが、日本は四方を海に囲まれているので、シーレーン(有事に際して確保すべき海上交通路のこと)が分断されるとそういうお花畑的な世界はガラガラと崩壊する。そのあたりの片鱗をわれわれはウクライナの戦争で思い知ったはずだ。

 ただ、残念ながら日本人は歴史的にそういう「ちょっと先に起きそうな悪い話」から頑なに目を背けるという癖がある。太平洋戦争の開戦前、軍部や政府が何度シミュレーションをしても「日本必敗」という結果が出たが、「そんなもんやってみなくちゃか分からねえだろ!」の精神論に押し切られた。

 三陸沖に巨大津波が押し寄せることも歴史の教訓で分かっていたが、「まあどうにかなんじゃない?」と波打ち際に原発を建てた。深刻な少子高齢化に陥ることも半世紀前には試算して分かっていたが、「10万円くらいバラまけば産むだろ」という感じで、北欧のような子ども政策の充実や、教育費無償化などに着手してこなかった。

 そういう国民性を踏まえると、日本の食料自給率が今後も改善される見込みは少ない。「ヤバいよ、飢えちゃうよ」とうろたえながらも、特に対策を練ることもなく、国内の農業や漁業は衰退の一途をたどっていく。

 そんなときに台湾有事のような国際紛争が起きて、シーレーン(有事に際して確保すべき海上交通路のこと)が分断されようものなら、輸入食品に依存するこの国はあっという間に「飢えるニッポン」になる。

 そこに10年以内に発生する確率が30%だという南海トラフ巨大地震が重なれば最悪だ。食糧がないところで大量の被災者が出れば、多くの人が飢えに苦しむ恐れもある。

 そんな深刻な「食糧危機」のダメージを少しでも軽減しようと、日本政府はもちろん、さまざまな業界、さまざまな組織が水面下で動いている。

 つまり、もはや日本の食料自給率が劇的に回復することはないので、食糧不足に陥ることは避けられないとして、少しでも飢える人を減らしていこうというわけだ。

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