では、どこでもいつでも格安でおいしい食事を腹一杯食べられることに慣れ切った日本人が、いきなりこんな「粗食」に耐えられるだろうか。「なんでこんなひもじい思いをしなくちゃいけないんだ」と不満が高まって社会は大混乱に陥るだろう。戦時中の闇市のように、ネットやSNSで肉や輸入食品を高額取引する恐れもある。
それだけではない。貧すれば鈍するではないが、政府と敵対する国家や政治勢力を支持する「非国民」が増えてしまうかもしれない。
こういう「国家の威信」が揺るがされそうになると、政治家や官僚たちは何を考えるのかというと、イモだらけの食生活になっても、文句を言わないように国民を「教育」しようと考える。さつまいもはオシャレな食べ物であって、主食からオヤツまでなんでもいける万能食くらいに認識を変えてしまえば、来るべき食糧危機にも国民の不満を抑えて乗り切れるはずだ――。
そういう日本のエリートたちの皮算用が近年の「さつまいもブーム」の背中を押しているような気がしてならないのだ。
なぜ筆者がそう考えるのかというと、さつまいもは、もともと「国策作物」だったからだ。日本のエリートたちは食糧やエネルギーに困ると、何かとつけてさつまいもを引っ張り出す癖があるのだ。「日本いも類研究会」のWebサイトの説明を引用させていただこう。
『わが国のサツマイモは長年、農家の自家用の作物としてひっそりと作られてきた。それが1931年(昭和6年)以来の「15年戦争」の中で「重要国策作物」の一つになり、国の音頭で大増産されることになった。ただ用途は食糧としてではなかった。
当時の合言葉に「ガソリンの1滴は血の1滴」があった。軍国主義時代の日本の悩みは近代戦に不可欠なガソリンの極度の不足だった。そこでサツマイモとジャガイモから燃料用の無水アルコールを作り、ガソリンに混入することになった』(参照リンク)
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